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SKYACTIV-D

このページでは SKYACTIV-D について説明する。


  1. スペック

    この表は基本的にマツダ技報に掲載されている表記に従い、マツダ技報に無い値等は最初に搭載された車両の諸元表等から引用している。各エンジン名称の後の()内の数字はマツダ技報に掲載された年としている。

    SKYACTIV-Dは、2012年にエンジン、トランスミッション、ボディ、シャシーの全てに SKYACTIV TECHNOLOGY を採用した CX-5(KE) にクリーンディーゼルとして搭載された 2.2 に始まった。これは低圧縮比と 2ステージターボチャージャー(Serial Sequential 2Stage Turbocharger)が特徴である。2014年に発売された DEMIO(DJ) に搭載された 1.5 は小排気量に対応するためにシングルの可変ジオメトリーターボチャージャー(Turbocharger with Varialble Turbine geometry)と高圧(Hith Pressure)と低圧(Low Pressure)を併用した EGR(Exhaust Gas Recirculation) に変更している。また、2.2 で空冷だったインタークーラーを水冷とした。2017年に発売された CX-8(KG) に搭載された 2.2 は改良版で燃料噴射制御機能を向上させ、2ステージターボチャージャーの低圧側を可変ジオメトリータボチャージャーとしている。1.8 は 2018年にマイナーチェンジされた CX-3(DK) に搭載された 1.5 の排気量拡大版で燃料噴射装置をソレノイド駆動から高応答なピエゾ駆動としている。3.3 は直列6気筒となり、直列4気筒である 2.2 の拡張版のような位置付けである。この表に無い技術としてピストンをスチール製に変更し機械抵抗損失の低減、未燃・冷却損失の低減を図っている。また、シングルの可変ジオメトリーターボチャージャーと高圧と低圧を併用した EGR に変更している。

    初期の SKYACTIV-D 2.2 では圧縮比を従来の 16.3 から 14.0 へ低下させることで NOx後処理装置を不要としたが、改良型では 14.4 となっている。また、SKYACTIV-D 3.3 では 15.2 で更に高くなっている。低圧縮比によってエンジンの軽量化と吹け上がりが軽くなるなどのメリットが生まれたが、排ガス中の NOx が減っても PM の問題の解決のためには圧縮比を若干上げる必要があるのだと理解している。

    燃料噴射装置について G3 というのは多分メーカーの型番と思うが、初期以降 G4 で 1.5 がソレノイド駆動以外はピエゾ駆動となっている。また、i-ART® という噴射量や噴射時期をフィードバックする制御を追加して応答性を高めると共に噴孔を小さくすることで燃料噴射量をより緻密にコントロールしている。初期型 2.2 ではキャビティー内での燃料と空気のミキシングの促進と,スキッシュエリアの空気利用の促進を目的としてピストンヘッドの形状をエッグシェイプ型(Egg-Shaped Type)とし、1.5 では膨張行程初期に冷却損失の要因となるリップ部での逆スキッシュ流動の低減を狙って段付きエッグシェイプ型(Stepped Egg-Shaped Type)に変更し、3.3 では前段噴霧を 2段エッグ燃焼室の上下空間に分割配置させ、前段噴霧の既燃ガスと後段噴霧との干渉を抑えることで、後段噴霧があらかじめ混合した状態で着火・燃焼することをねらいとして 2段エッグ(Dual Zone Egg-Shaped Type)燃焼室とするように進化している。

    Engine SKYACTIV-D 2.2 (2012) SKYACTIV-D 1.5 (2015) SKYACTIV-D 2.2 (2017) SKYACTIV-D 1.8 (2019) SKYACTIV-D 3.3 (2022)
    Engine Type In-line 4 In-line 6 w/ 48V mild hybrid
    Displacement / cm3 2188 1498 2188 1756 3283
    Bore × Stroke / mm 86.0×94.2 76.0×82.6 86.0×94.2 79.0×89.6 86.0×94.2
    Compression Ratio 14.0 14.8 14.4 14.8 15.2
    Injection System Common Rail System
    G3 Piezo
    Common Rail System
    G4 Solenoid
    Common Rail System
    G4 Piezo w/ i-ART®
    Common Rail System
    G4 Piezo
    Common Rail System
    G4 Piezo w/ i-ART®
    Nozzle Type 10 holes
    Mini-Sac
    1112 cm3・min-1
    10 holes
    Short Hole Length Nozzle
    600 cm3・min-1
    Φ0.133mm×10holess 10 holes
    Short Hole Length Nozzle
    600 cm3・min-1
    Φ0.106mm×10holes
    Max. Injection Pressure / MPa 200 250
    Piston Cumsustion Bowl Shape Egg-Shaped Type Stepped Egg-Shaped Type Dual Zone Egg-Shaped Type
    Tubocharger Serial Sequential 2Stage Turbocharger Turbocharger w/ Varialble Turbine geometry w/ Rev. Sensor 2Stage Turbocharger
    HP: FGT
    LP: Turbocharger w/ Varialble Turbine geometry
    Turbocharger w/ Varialble Turbine geometry Turbocharger w/ Varialble Turbine geometry
    EGR System High Pressure w/ & w/o Cooling High Pressure Loop w/o Cooling & Low Pressure Loop w/ Cooling High Pressure w/ & w/o Cooling High Pressure Loop w/o Cooling & Low Pressure Loop w/ Cooling HP & LP
    After-treatment System DOC + DPF
    Maximum Torque / N・m / rpm 420 / 2000 270 / 1600-2500 450 / 2000 270 /1600-2600 550 /1500-2400
    Maximum Power / kW / rpm 129 / 4500 77 / 4000 140 / 4500 85 / 4000 187 / 3750

    「i-ART®」is a registered trademartk of DENSO CORPORATION
    FGT: Fixed Geometry Turbocharger

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  2. 技術

    この項目では上に示したスペック以外の特筆すべき技術について説明する。これらの技術は初期型 2.2 以降に開発されたもので、各エンジンの商品改良として順次組み込まれている。

    • ナチュラル・サウンド・スムーザー (Natural Sound Smoother)

      ナチュラル・サウンド・スムーザーは初めに 2015.2.27 CX-3(DK) の広報資料に掲載された静粛性を高める技術である。ピストンピンに組み入れたダンパーが「燃焼によるピストン系のノック振動を打ち消す」ことで、ノック音のエネルギーをさらに効果的に吸収・減衰する仕組み発進時やゆっくり加速するときに生じるディーゼルノック音を抑制するとともに、エンジン音質の向上を実現するとある。詳細な説明がナチュラル・サウンド・スムーザーつくり手の想い Vol.01にある。また、2015年マツダ技報「CX-3の紹介」の中で、CX-3に搭載した SKYACTIV-D 1.5 に初採用とある。いわゆるカラカラ音を減少させる技術だが、全く無くなるわけではない。ただし、ディーゼルエンジンと言えば始終カラカラと音がしていたような印象が強いが、ちょっとノッキング音がするかな、という程度の音である。

    • ナチュラル・サウンド・周波数コントローラー (Natural Sound Frequency Control)

      ナチュラル・サウンド・周波数コントローラーは初めに 2016.7.14 AXELA(BM) の改良のニュースリリースに掲載されたノック音自体を抑制し心地よいエンジンサウンドを追求した技術である。燃料噴射タイミングを0.1ミリ秒単位で制御し、エンジン加振力を構造系共振と逆位相にさせ、ノック音を低減とあり、ナチュラル・サウンド・スムーザーと共にノッキング音の低減に貢献する。2015年マツダ技報「SKYACTIV-D ディーゼルノック音の低減技術」の中で詳細な説明がある。正直この技術の効果は体感できず、つまり音がしないのが通常なので分からない。

    • DE精密過給制御 (High-precision DE boost control)

      DE精密過給制御は初めに 2015.12.24 DEMIO(DJ) と CX-3(DK) の改良のニュースリリースに掲載された軽負荷領域でのアクセル操作に対してクルマがリニアに反応する緻密なエンジン制御である。詳細な説明はマツダのくるまづくりの「ダイナミクス」「クリーンディーゼル」の中に説明がある。いわゆるターボラグの解消によってアクセルを踏み込むスピードに応じて過給圧の制御を最適化し、エンジンのトルク応答を緻密にコントロールし、低速域のアクセル踏み込みが少ない領域(いわゆる緩加速)で、人間の感覚にぴったりと合ったトルク変化を実現するものである。マツダ技報の新型 2.2 の説明によれば過渡時のトルクコントロールを定常走行の噴射量主体から空気量主体へと変更するために EGRバルブを制御している。1.8 の場合にはこれに加えて可変ジオメトリーターボチャージャーの制御で実現している。編者は初めてターボチャージャー付の車両に乗ったので、所謂ターボラグがどのように体感されるのか分からない。ターボチャージャーの効果があるはずなのにターボラグを感じないということはリニアな制御が効いているということなのだろう。渋滞した状況でストップアンドゴーを繰り返し、時速数km 程度を楽に維持できるのはこの技術の効果だと思う。

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  3. エンジンシステム

    マツダ技報より各エンジンシステムの構成図を引用する。特に EGR の構成、ターボチャージャーがエンジン毎に異なる。

    SKYACTIV-D 2.2 (2012)

    SKYACTIV-D 2.2 (2012)

    SKYACTIV-D 1.5

    SKYACTIV-D 1.5 (2015)

    SKYACTIV-D 2.2 (2017)

    SKYACTIV-D 2.2 (2017)

    SKYACTIV-D 1.8

    SKYACTIV-D 1.8 (2019)

    DOC: Diesel Oxidation Catalyst
    DPF: Diesel Particulate Filter

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  4. 搭載車両

    以下の表の日付は各車両の発売や商品改良のニュースリリースの日付を用いている。また、車両名の後に最大トルク(N・m)、最大馬力(kW)の各値を示す。

    年月日 SKYACTIV-D 2.2 (2012) SKYACTIV-D 1.5 (2015) SKYACTIV-D 2.2 (2017) SKYACTIV-D 1.8 (2019) SKYACTIV-D 3.3 (2022)
    2012/02/16 CX-5(KE),420,129
    2012/11/20 ATENZA(GJ),420,129
    2013/10/09 AXELA(BM),420,129
    2014/09/11 DEMIO(DJ),250,77
    2015/02/27 CX-3(DK),270,77
    2016/07/14 AXELA(BM),420,129 AXELA(BM),270,77
    2017/02/02 CX-5(KF),420,129
    2017/09/14 CX-8(KG),450,140
    2018/02/08 CX-5(KF),450,140
    2018/05/17 CX-3(DK),270,85
    2018/05/24 ATENZA(GJ),450,140
    2019/05/24 MAZDA3(BP),270,85
    2019/07/04 MAZDA6(GJ),450,140
    2019/07/18 MAZDA2(DJ),250,77
    2019/09/20 CX-30(DM),270,85
    2020/10/03 CX-5(KF),450,147
    2020/11/19 MAZDA3(BP),270,95
    2020/12/03 CX-8(KG),450,147
    2020/12/17 CX-30(DM),270,95
    2022/06/22 CX-60(KH),500,170
    2022/12/09 MAZDA6(GJ),450,147
    2023/09/21 CX-3(DK),270,95

    1 PS = 735.5 W = 0.7355 kW、1kW = 1.3596 PS
    1 kgf ・m = 9.807 N・m、1 N・m = 0.1102 kgf・m

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  5. 参考ページ

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