BP-ZE型ガソリンエンジン
BP-ZE型エンジンとは BG型 FAMILIA や ASTINA に搭載された BP型エンジンの改良版(参考文献 [1])である。1989年10月に発売された ASTINA の兄弟車である EUNOS 100 に搭載(参考ページ [2])され、1993年7月の NA型 ROADSTER のマイナーチェンジで搭載(参考ページ [3])されたようなので、LANTIS が同年9月発売だから既存のエンジンを用いたことになる。CPU を 8bit から 16bit に変更して高レスポンスとし、燃料噴射を数気筒まとめて噴射するグループ噴射から行程に同期して燃料を定時噴射するシーケンシャル噴射にしてより燃焼制御を精密(参考ページ [4])にし、吸入空気量を計測するエアフローメーターをフラップ式(可動プレート式)から熱式(ホットワイヤ式)に変更して大気圧や気温の変化の影響を受けないようにし圧損を減らし(参考ページ [5])、可変慣性吸気システムの採用して低・中速トルクを向上させた等の特徴(参考文献 [1])がある。シリンダーブロックはハーフスカート鋳鉄製で、これ以降のエンジンはアルミニウム製が主流となっていく。軽量化と放熱性のためにはアルミニウム製の方が良いと思っていたが、参考ページ [6] にあるように高い筒内圧を考慮すると薄くした鋳鉄製という選択肢が有利な場合もあるようだ。ハーフスカートはクランク軸中心でブロックが分割される構造で対するディープスカートとはブロックの外側だけがクランクセンターより下に伸びて、ベアリングキャップを抑え込む構造でブロック強度が増しクランク支持剛性も高くなる利点がある(参考ページ [7])。
初めて自身で所有した車なので他と比較することもできないのだが、特に癖も無く回さなければ走らないわけではなくむしろ下から上までスムーズに回る印象だった。最近の車両のようなカバーの無いむき出しのアルミニウム製鋳造シリンダーヘッドが如何にも DOHC エンジンであることを主張していて懐かしい。LANTIS を所有していた頃からこれを記している 2024年9月でも動力性能より運動性能重視は変わらないので、エンジン自体に余り興味が無かったのかも知れない。
型式 BP-ZE 種類 水冷直列4気筒DOHC16バルブ 総排気量 / L 1.839 ボア×ストローク / mm 83.0×85.0 圧縮比 9.0 燃焼室 ペントルーフ型 バルブ挟み角 / 度 50 最高出力 / kW〈PS〉/ rpm 99〈135〉/ 7,000 最大トルク / N・m〈kgf・m〉/ rpm 157〈16.0〉/ 4,500 燃料供給装置 電子制御燃料噴射 使用燃料・タンク容量 / L 無鉛レギュラーガソリン・55 トランスミッション
電子制御4速オートマチックは 3速にオーバードライブギアである 4速を追加したもので、ホールドモードを持つ。セレクタは P、R、N、D、S、L があり、ホールドスイッチを押すと、D が 3速固定(低速では 2速と 3速の自動変速)、S が 2速固定、L が 1速固定となり、マニュアル的操作が可能だった。カタログにはエンジンと AT の総合的なトルクマネージメント制御を採用。AT の制御と連動し、エンジン側が添加タイミングや燃料噴射量をコントロールして、瞬時に変速ショックを制御するとある。トルクコンバータと遊星歯車から成るオートマチックトランスミッションは、トルクコンバータの伝達効率の低さというデメリットが燃費の低下とダイレクト感の無さに繋がった。変速応答時間も長く一呼吸以上かかって変速するし、キックダウンできてもアクセルを戻すと勝手にシフトアップしてしまうから、降坂では意識してシフトダウンする必要があった。この頃のオートマチックトランスミッションはこのような挙動が当り前だった。
変速比
(第1速/第2速/第3速/第4速/後退)2.800/1.540/1.000/0.700/2.333 レシオカバレッジ 4.000 最終減速比 3.833 燃費
LANTIS TypeG の燃費(km / L)を以下の表に示す。比較のため、TypeG で 5MT の値も示した。10・15モードの燃費で比較すると AT では MT の場合の約 15% 燃費が悪化する。トルクコンバータの伝達効率の悪さが理由の1つに挙げられる。編者の使い方では一般道で 8km / L、高速道で 12km / L 程度だった。参考ページ [8] にあるように一定の車速で平坦舗装路を走行した場合の定地走行燃費が余りに非現実的なので、10モード燃費、更に10・15モード燃費が導入された。前者は日常的な一般路公道での運転パターンを想定した燃費計測方法で後者はこの10モード燃費に郊外走行の運転モードを追加したものだった。10・15モード燃費も全く的外れな数字でもなく、一般道ではこの 8割程度と見積もれば良かった。高速道で急加速、急減速を避け一定速度で巡行すれば、一般道の 1.5倍程度まで燃費が改善できた。編者は茨城県日立市と出身の名古屋市間約 500km を高速道路主体で往復するので、この燃費だと途中給油することなく移動可能であった。
4AT 5MT 10・15モード 10.6 12.6 60km/h定地 20.0 21.0 車両重量 / kg 1,190 1,170 参考ページ、文献
- [1] 交通タイムス社 GOLD CARトップ ニューカー速報No.75 LANTIS 1993年10月5日発行
- [2] ユーノス100 | 名車文化研究所 2022年2月7日公開
- [3] 【国産名機10選 08】「マツダ BP-ZE」は、排気量アップでロードスターに余裕を生んだ 2019-08-16 Webモーターマガジン編集部
- [4] シーケンシャルインジェクション|[大車林]自動車総合情報・専門用語事典
- [5] 【自動車用語辞典:センサー「エアフローセンサー」】エンジンが吸い込む空気の量を計測する | clicccar.com
- [6] 内燃機関超基礎講座 | シリンダーブロック:エンジンのパワーを支える、まさに屋台骨
- [7] ディープスカート、ハーフスカート。シリンダーブロック形状の話 | 内燃機関超基礎講座
- [8] 燃費表記は時代とともに変化した! WLTCでようやく実用燃費に近い数値が表記されるようになった | 自動車情報・ニュース WEB CARTOP