国内仕様との相違点
編者が購入したオーストラリア仕様の TT-R250 に関する情報は WWW上には少ないが、クマゴローさんのTT250Rオーストラリア仕様/コンペティションモデルインプレッションに画像付きの詳細な説明がある。wanawanaさんのTT250Rのページに 4PXA の情報もある(2008年7月追記)。以下 2004年モデルについて 4GY、4RR2 と乗り継いだ編者の気付いた点を記す。
外観上特に目立つ違いはヘッドライトとカウルの形状であろう。ヘッドライトは大型となり初期型 TW200 とほぼ同サイズに見えるが、バルブは H4 60W/55W となっている。ヘッドライトはカウルに直接ではなく、ステーを介してハンドルブラケットに固定されている。エンジンを掛けないとヘッドライトが点灯しない国内仕様と異なり、メインスイッチをオンにするだけでヘッドライトが点灯する。また、ウィンカも大型となっているので転倒時の破損が心配であるが、国内仕様の 10W の小型ウィンカへの換装は簡単である。ただし、バルブが 21W なので、ウィンカリレーを交換する必要がある。同一形状でコネクタも同じなので交換は差し替えるだけである。
国内仕様のデジタルメータと異なり、トリップメータ付きのアナログメータとなっている。ニュートラルなどのインジケータ類も国内仕様とは異なっている。メータ全体が前方に大きく移動しており、ハンドル周りの軽さを追求した国内仕様に逆行しているのが残念である。以下に述べる樹脂製タンクの装備によって、ブレーキホースガイドが前方へ移動している。写真には写っていないが、国内仕様の特徴だったハザードランプスイッチは無い。
furasoraさんのTT250R レストア日記【その3】内に国内仕様でハンドル周りの軽さを追求したことが分かる詳細な写真がある。(2023/11/18追記)
樹脂製タンクの採用も海外仕様の特徴である。流行のシュラウドを模した形状によって容量が増しているらしい。当然、取り付け部は国内仕様と全く異なるので容易に流用はできない。年式によってタンクのグラフィックが異なる。タンクは異なってもシートの取り付け部は共通であり、形状はほとんど同じに見える。アナログメータ装着によって前輪ハブへメーターケーブルが伸びている。フロントフォークアッセンブリはパーツナンバーが異なるが、アウターチューブ(左のみ;2006年7月追記)、インナーチューブは共通である。ストロークは 280mm で国内仕様と同様であるが、スプリング、バルブ等が異なりセッティングが変更されていると思われる。
スイングアームはスチール製とされるが、外観上は区別がつかない(どう見てもアルミニウム製。カタログの誤記だろう。2015年10月追記)。ホイールトラベルは国内仕様と同様の 280mm である。リアクッションアッセンブリはパーツナンバーが異なり、設定体重の違いがあると思われる。シート高と最低地上高が共に国内仕様より 15mm ずつ大きくなっている。これ故に編者の体格では国内仕様よりも足付き性は悪化したが、サスペンションのセッティング変更によって対処が可能と思われる。国内仕様の特徴だったカラードリムもシンプルなシルバーとなっている。
リアウィンカも大型化され、ステーの形状も異なる。フレーム側の形状は同じなので、国内仕様への換装は可能である。ただし、上で述べたようにウィンカリレーの交換が必要となる。ナンバーブラケットは長いものが採用されているが、国内仕様の小型のものにボルトオンで換装できる。ナンバー灯のケースはパーツナンバーが異なりバルブも国内仕様の 3.4W x2 に対して 5.0W x2 であるが、形状は同じに見える。国内仕様よりもフェンダー外側に張り出しているものの国内仕様のナンバーブラケット交換によって国内仕様と同様にフェンダー内側になる。
マフラーもエキゾーストパイプも外観は国内仕様と同様だが、パーツナンバーは異なる。エキゾーストパイプ内に詰め物をしてパワーダウンさせていると聞くが確認はしていない、写真のようにマフラーとの繋ぎ目でかなり口径を絞っていることを確認した。スペック一覧に示したようにエキゾーストパイプのパーツナンバーは異なり、パイプ裏の刻印は国内仕様の 4GY に対して 4PX である(2006年4月追記)。ちなみにキャブレタのパーツナンバーは国内仕様の最終型と同じである。
クラッチプレート、フリクションプレートが国内仕様よりもそれぞれ1枚ずつ増やされているのに伴って、クランクケースカバーのクラッチ部分の形状が異なる。このためかオイル容量は国内仕様より0.1L多い。
国内仕様ではキックアームがオプションだったのに対して標準装備されている。4RR2 には標準装備だったフレームガードは、右側は取り付けネジが設定されているので装着できるが、左側は取り付けネジがないのでそのままでは装着できない。
アナログメータ装備に伴い、国内仕様のデジタルメータセンサーが取り付けられていたドライブスプロケット部カバーはシンプルなものとなった。この方が泥詰まり防止には有効なのが有難い。サイドスタンドスイッチの上側に国内仕様に無かった黒い樹脂製のチェーンガードが見える。(2016年7月修正)
キックアームは標準装備であるが、国内仕様オプションのキックキットにあったデコンプは装備されていない。4RR2 のページで述べたオイル漏れのトラブルを懸念したのだろうか。小排気量なので特にデコンプも必要ないと言えるが。
ちなみにエキゾーストパイプを取り外すためには、写真左上に見えるエンジンマウントステーを取り外す必要がある。
海外仕様の特徴のダウンチューブに固定された輸出仕様であること示す車台番号標である。これに記載されている VINコードはパーツ検索の際、必要となることがある。下側の白いプレートには騒音測定値が 3500r/min時に 79dB(A)であると書いてある。見易い位置であるが、ダートを走行した場合、真っ先に汚れ、傷が付く場所だけに不可解な仕様である。
チェーンガイドは 4RR2 とは異なり、4GY1 と同じ形状である。ちなみに、DT200WR(3XP) と同じ部品である(ただし、部品番号の下2桁が異なることに注意。おそらく装着には問題ないと思われるが、未確認)。
- クランクケースカバー
2ちゃんねるバイク板の「YAMAHA TT250R & Raid Part17」のスレッドで国内仕様と 4PXA のクランクケースカバー(部品番号 5GF-15431-00)の互換性が2010年4月頃に話題となった。詳細は 261 から始まる内容を読んで欲しい。元々の情報は参考ページの項目の wanawanaさんのページにあり、261氏は実際に国内仕様に 4PXA のクランクケースカバーを装着した。その写真を左右に示す。画像をクリックすると拡大する。クラッチ部分に YAMAHA の文字があるのが 4PXA のもので、クラッチの正面から見て5時の位置に国内仕様には無いでっぱりがある。オイルレベル窓の形状も異なる。部品番号から類推されるのは、このクランクケースカバーはオーストラリア仕様の前に USA仕様のために仕様変更されたということである。
また、261氏の撮影した 4PXA のクランクケースカバーの裏側の写真を左に示す。画像をクリックすると拡大する。でっぱりの裏側は切削されているようだが、用途は不明である。
なお、上で述べたようにクラッチプレート、フリクションプレートの枚数が増えているため、クラッチボスとドリブンギアの部品番号は国内仕様と異なる。クランクケースカバーの装着に問題は無いが、オイル容量はレベル窓でチェックする必要があるだろう。また、キックキットを装着していない場合には、パーツリストのスタータクラッチのページに掲載されているプラグが必要となる。オイルレベル窓の部品も異なる。
なお、元画像は業物のバイク板画像掲示板 No2中にあり、これらの写真の転載を快諾してくれた該当スレッドの 261氏に感謝する。
- クランクケースカバー
スペック一覧
編者の調べた範囲での各仕様毎に異なるスペック等一覧を以下に示す。勿論、ここに挙げた以外の違いはある。内容は無保証である。利用される方は各自で内容の確認をお願いしたい。
(2006年3月記録)(2006年4月追記)(2006年7月追記)(2006年8月追記)(2006年9月追記)(2007年9月追記)(2008年8月追記)(2009年12月追記)(2015年10月追記)国内仕様 2004
オーストラリア仕様
4PXA2004
USA仕様4GY1 4RR1 4RR2 発売年月 1993年4月 1995年3月 1997年1月 ? ? 車体
・
エンジン2次減速比 44/14 52/13 エキゾーストパイプ 4GY-14611-00 4GY-14611-01 4PX-14611-00 4GY-14611-01-00 マフラ 4GY-14711-00 4GY-14711-02 4GY-14711-04 5GF-14710-00-00 ロータアセンブリ 4GY-81450-00 4RR-81450-00 4RR-81450-00-00 アンダーブラケット 4GY-23340-00 4RR-23340-00 4PX-23340-10 4PX-23340-10-00 ハンドルクラウン 4GY-23435-00 4RR-23435-00 4RR-23435-00-00 キャスタ 27.7° 27.1° 27.2° 26.0° トレール 113mm 115mm 109mm 106mm 108mm シート高 895mm 910mm 915mm 軸間距離 1415mm 1410mm 1405mm 最低地上高 285mm 300mm 305mm エンジン
オイル量通常交換時 1.00L 1.10L オイルフィルタ
エレメント
交換時1.10L 1.20L エンジン
オーバーホール時1.35L 1.45L? 1.45L フロントフォーク トラベル 280mm スプリング自由長 472mm ? 472mm オイル量 0.560L 0.566L ? 0.555L オイルレベル 130mm 120mm ? 130mm 圧側減衰力標準 15段 11段 13段 圧側減衰力調整範囲 1(強)~20(弱)段 フォークアッセンブリ(L) 4GY-23102-00
4GY-23102-014GY-23102-01 4PX-23102-10 4PX-23102-10-00 フォークアッセンブリ(R) 4GY-23103-00
4GY-23103-014GY-23103-01 4PX-23103-10 4PX-23103-10-00 ピストンロッドアッセンブリ 4GY-2314A-00
4GY-2314A-014GY-2314A-01 4PX-2314A-10 4PX-2314A-10-00 スプリング 4GY-23141-00 4PX-23141-10 4PX-23141-10-00 スペーサ 4GY-23118-00
4GY-23118-014GY-23118-01 4GY-23118-01-00 バルブコンプリート 4GY-2316A-00
4GY-2316A-014GY-2316A-01 4PX-2316A-10 4PX-2316A-10-00 エアバルブコンプリート 23X-23190-L0 24M-23190-00 24M-23190-00-00 リアクッション パーツナンバー 4GY-22210-00-P0 4GY-22210-02-P0 4GY-22210-03-6W 4PX-22210-00 5GF-22210-00-P0 スプリング標準 238mm 236mm 230mm
(実測)228mm スプリング弱 243mm 236mm ? 236mm スプリング強 226mm 224mm ? 224mm 圧側減衰力標準 11段 8段 8段 11段 圧側減衰力調整範囲 1(弱)~20(強)段 5(弱)~33(強)段 5(弱)~15(強)段 5(弱)~15(強)段 伸側減衰力標準 9段 10段 10段 8段 伸側減衰力調整範囲 1(強)~40(弱)段 1(強)~16(弱)段 1(強)~16(弱)段 1(強)~16(弱)段 キャブレタ パーツナンバー 4GY-14301-00
4GY-14301-014GY-14301-20
4GY-14301-244GY-14301-24 5GF-14301-01-00 キャブレタ刻印 4GY00 4GY20
4GY1 24? 5GF1 00 メインジェット #142
#147#147 #137 ジェットニードル・クリップ段数 #5C9C - 3/5 #5C9C - ?/5 #5C9C - 3/5 メインノズル φ2.605(V05) φ2.595(V95) パイロットジェット #48 #50 #52 パイロットスクリュ戻し回数 2 ¼ ± ½ 1 ¾ ± ½ ? 1 ½ スタータジェット1 #66 ? #66 油面(スペシャルツール使用) 7.5~9.5mm ? 7.5~9.5mm その他 フラッシャリレー FB222/DENSO FE218BH/DENSO
10W ×2FD246BH/DENSO
(21.23,27)W ×2なし ・圧側減衰力調整:アジャスタを左一杯(リア)、右一杯(フロント)に緩めた位置を1とする
・伸側減衰力調整:リアクッションを下から見てアジャスタを右一杯に締めこんだ位置を1とする
・4GY1でパーツナンバーが二つあるのは途中の仕様変更を表す。
・以上の内容は以下の情報を参考にした。・TT250R サービスマニュアル 4GY-28197, 4RR-28197-05, 4RR-28197-06
・Brian氏の Yamaha TTR250 FAQ の Where can I get a manual?
・ヤマハ発動機株式会社 部品情報検索
・Yamaha Motor Corporation, U.S.A. Parts Catalog and Owner's Manuals (2015年10月リンク修正)
・TT250RS (4PXA) AUSTRALIA PARTS CATALOGUE QQS-CLP-P04-4PX
・TT250RS OWNER'S MANUAL 4PX-28199-29
・オーストラリア仕様については株式会社プレストコーポレーションのパーツ検索情報で検索可能になった。ただし、型式 4PXD から。(2007年9月追記、2015年10月リンク修正)
便利な機構
この項目では、TT250R の便利な機構について述べる。
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シートサブフレームはシートレールとフートレスト付近のフレームの2箇所でボルト留めされている。これを外すと、エアクリーナケースが外せるようになる。写真はシートレール側のボルトを外した状態である。エアクリーナケースはシート側のボルト2本と、バッテリーケースボックス側のボルト1本で留まっているだけであるが、これらのボルトを外す前にキャブレータとのジョイントを留めているバンド、エンジン本体から来ているブローバイガスタンクへのホース、ブローバイガスタンクのホースと共に留められているキャブレータのブリーザパイプを外すこと。
ちなみに、バッテリーケースボックスもボルト3本で留められているが、2本は回しにくい位置にあるので、なめないように注意すること。
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エアクリーナの交換に工具は不要なのが、TT250R の売りの一つである。左側のサイドカバーをグロメットから取り外して写真のように回転させれば良い。なお、キャリアを取り付けた場合には、回転させやすいようにキャリアと干渉する部分を切り取る必要がある。写真は整備途中のものなのでシートとタンクが外れているが、エアクリーナを取り出すのにこれらを取り外す必要はない。
エアクリーナケースの蓋は、3つのファスナーを緩めれば外せる。ファスナーも蓋に留まったままなのが有難い。エアクリーナ本体は2つの鋼線で挟まっているだけなので、これを外せば良い。
- 車高調整のやり方については、別項車高調整に記した。
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ハンドルホルダーは固定するネジの中心軸とハンドルの中心軸がオフセットしているので、前後反対に取り付けることでハンドルを手前に寄せることができる。編者もそうだが、小柄なライダーにはポジションの改善に便利である。
アッパーブラケットの取り付け部のナットを緩めればハンドルホルダーの向きを変更できる。4GY1 の場合、このナットはベータピンで固定するタイプだが、それ以降の機種ではセルフロッキングナットに変更されている。
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リアのアクスルシャフトを抜いてもホイールが脱落しないのも、TT250R の売りの一つである。これはスイングアームとカラーに工夫があるからだ。勿論、スイングアーム後端のストッパーを外す必要もない。レースに使用するのでもなければリアホイールを頻繁に外すことはないと思うが、それでもちょっとしたメンテンナンスの際に有難さを実感できる。
furasoraさんのTT250R レストア日記【その4】内に詳細な写真を用いた説明がある。(2023/11/10追記)
アクスルシャフトを固定するナットの2面幅は24mmで、アクスルシャフト側は写真のように回り止めの鋼棒が溶接されている。大きなレンチを2本携帯する必要がないのがうれしい。
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TT250R のブレーキペダルには折れ曲がり防止用のワイヤリングのために孔が開けられている。CRM80 ではブレーキペダルを曲げて苦労したこともあったが、TT250R は最低地上高が高いせいか、そのようなトラブルの経験はない。編者にとっては不要な装備ではあるが、標準でこのような工夫がされているのは、発表当時盛んだったエンデューロレースを意識してのことだろう。
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デジタルメータの操作方法
勿論、オーストラリア仕様の TT-R250 にはデジタルメータは装備されていないが、TT250R 系共通の情報として別ページにまとめた。
車高調整
初代 TT250R からの特徴の一つとして、リアクッションユニットの長さの調節によって車高調整が可能なことが挙げられる。本来はキャスター角の微調整の為の機構らしい。
まず、エンジン下にスタンドなどを設置しリアホイールを浮かせる。当時の雑誌に依ればリアホイールを外す必要は無いようだが、この状態でリレーアームとコネクティングロッドを連結しているボルトを外す。するとスイングアームがフリーになるので、タイダウンベルトなどでスイングアームごと上に引っ張り上げておく。更にリアクッションユニット下部取付ボルトを抜くと、写真のようにクッション下部ブラケットを止めているナット(写真で金色に見えるナット。二面幅26mm)を回せるようになる。これを緩め、ブラケットを回し任意の長さにしてナットを締め付けるだけである。10mm の調整幅があり、フルに縮めると約35mm車高が落ちるようだ。ただし、工場出荷時にはネジロックされているので、一旦クッションを取り外し緩めるとやり易い。伸側減衰力調整ノブの上側の部品(右の写真では左側)は二面幅19mmのスパナで固定できる。ちなみに右の写真は5mm縮めたものである。
ちなみに、スイングアームのピボットシャフトのセルフロッキングナットを外すには 22mm のディープソケットレンチ、コネクティングロッドのスイングアーム側のフランジナットボルトを外すには 17mm のソケットレンチが必要である。(2008年5月追記、2015年10月修正)
また、バランスを取るためにフロントフォークの突き出しを行う場合、ハンドルホルダーを前後180度反転させれば突き出すスペースが空く。インナーチューブの肉抜き部分が、アッパーブラケットにかからないように突き出し量は 30mm 以内とされている。
本ページをご覧になり、車高調整された参考ページの項目の「私的未舗装路日誌」を書いている方からメールを頂いた。初期型には二面幅19mmのスパナで固定できる部分が無い(2010/5/30の記事)そうである。(2010年5月追記)
オイルクーラー
初代 TT250R の頃から純正オプションとして販売されていたオイルクーラーは 2006年現在では当然のことながらメーカー欠品である。オークションでは高値で取り引きされているらしい。ちなみにパーツナンバーは 4GY-W0793-00 である。4GY の時に装着し、4RR2 に移植し、更に 4PXA にも移植した。取り付けの際、クランクケースカバー内部のボルト(ヤマハ発動機株式会社 部品情報検索においてオイルポンプの項目で国内仕様では No.19、4PXA では No.17 の部品番号 90105-122A1)を長いボルト(部品番号 97017-12025)に交換し、オイルラインを変更しないとオイルクーラーへ充分なオイル流量が確保できない。また、ステーはエンジンマウントのダウンチューブ側のボルトに共締めだが、このボルトも長いものに交換することになる。中古を購入した場合には注意されたい。
写真のように前方に伸びた樹脂タンクに干渉しないが、転倒時にステーが曲がるとフロントフェンダーに接触することがある。オイルクーラーの厚みはダウンチューブの前後幅とほぼ同じである。オイルクーラーの装着によってオイル量はノーマルプラス 250cc となる。取付説明書にはオイルクーラーキットを装着状態ではエンジン始動直後の空吹かしをさけるよう指示がある。部品などの詳細については、網氏のオイルクーラについての覚書もしくは Brian氏の Yamaha TTR250 FAQ の Can I fit an oil cooler? を参照のこと。
他車種のオイルクーラーを流用している方の説明ページは以下の通り。
オイルクーラーキット付属の取付説明書(4GY-2819Y-00)と網氏の調査した部品番号一覧
No. 品名 個数 部品番号 備考 ① フランジボルト 1 97017-12025 クランクケースカバー内部のボルト ② ガスケット 5 90430-12202 クランクケースカバー内部のボルト(1)とオイルホースをクランクケースカバーに固定するユニオンボルト用(2×2) ③ クランクケースカバーガスケット 1 4GY-15461-00 ④ ステー 1 - ⑤ フランジボルト 2 95811-08075 ステーをフレームに固定するボルト ⑥ オイルクーラー 1 - ⑦ Oリング 2 93210-14579 オイルホースとオイルクーラーの接続用 ⑧ オイルホース1 1 90793-66768 ⑨ オイルホース2 1 90793-66769 ⑩ ヘキサゴンボルト 4 91316-06012 オイルホースをオイルクーラーに固定用(2×2) ⑪ グロメット 2 90480-15235 オイルクーラー固定用 ⑫ カラー 2 90387-07674 オイルクーラー固定用 ⑬ ワッシャ 2 90209-06174 オイルクーラー固定用 ⑭ フランジボルト 2 95806-06016 オイルクーラー固定用 ⑮ ユニオンボルト 2 90401-12122 オイルホースをクランクケースカバーに固定 (2008年5月追記)(2008年7月追記)(2008年9月追記)(2009年2月追記)(2009年12月修正)(2018年7月追記)
キャリア
TT250R用のキャリアは、これを記している2008年8月現在では、ライディングスポット社製、ラフ&ロード社製、タカツ製作所社製があるようだが、当然のことながら純正のもの ( パーツナンバー 4GY-W0736-01 ) は販売中止である。写真のキャリアは 4GY の頃から使用しているものである。ステンレス板とアルミ中空角パイプを組み合わせたキャリアは錆び難く、見た目も良い。取り付けには、リアフェンダーの一部と、左サイドカバーの一部をカットする必要がある。ちなみに、初期に販売されたキャリアは横方向のバーが1本しかなかったが、後に2本となった。ただし、フェンダーバッグの搭載には1本を外す必要がある。写真のフェンダーバッグは 4RR2 から移植したもので、4PXA には装備されていない。また、キャリア後端の下に見える黒いものは、外部アンテナのステーである。
メインの角パイプの端面のキャップとキャリアを組み立てるボルト孔のプラグを紛失したが、オプションであるが故に部品番号が分からず、困っていた。しかし、ヤマハの純正オプションを販売しているワイズギアの取説ダウンロードにある「 DT230 リアキャリア」の取扱説明書を読んで、以下の部品を注文し、組付けた。(2015年10月リンク修正)
名称 パーツ番号 キヤツプ,バツク サポ-ト J40-7836H-00 プラグ 90338-12192 取扱説明書に掲載されている角パイプの端面のキャップのパーツ番号で注文しても、この表のパーツ番号の部品が納品される。
スタンディングハンドル
二輪二足がキーワードのセローは、初代(1KH)からバイクを押したり引いたりするためにシート後方にスタンディングハンドルが標準装備されてきた。ピュアオープンエンデューロがキャッチフレーズだった TT250R には右側のみこのスタンディングハンドルが標準装備されており、左側はオプション( パーツナンバー 4GY-W0735-00 )扱いだった。編者の TT-R250 も 4GY より装着してきた。掴んでバイクの向きを変えるために使う以外に、写真のようにキャリングコードを掛けるにも役に立つ。写真では分かり難いが、左右で形状は異なる。
フロントサポートアーム
スタンディングハンドルと同様にセローには標準装備だった三又に装着するハンドルで、TT250R の国内仕様のオプションにも存在しない。このフロントサポートアームはライディングスポット製である。元はナイロンコーティングが施され白色だったが、剥がれてきたので全てコーティングを取り適当にペイントした。写真では塗装が剥げ少々錆が浮いた状態である。4RR2 より装着しており、バイクを引いたり、支えるのに大変便利である。4PXA 装備のヘッドライトでは当然装着不可なので、ヘッドライトを WR400F(5BF) のものに換装した。これを装着すると 4PXA装備のブレーキホースガイドは装着できないし、4RR2装備のものはガソリンタンクに干渉するので、ステーを自作して対応した。
フロントディスクガード
フロントディスクガードは右側のフォークカバーと共にオプション販売されていた。ちなみに パーツナンバーは 4GY-W0749-00 である。ディスクガードはアクスルシャフトにボルト留めとフォークにクランプバンド留め、フォークカバーはフォークに2箇所でクランプバンド留めである。編者の 4PXA はメータケーブルをフォークにバンドで固定するために、フォークカバー上部をカットして装着している。
リアディスクガード
リアディスクガードもオプション( パーツナンバー 4GY-W0786-00 )扱いで、スイングアーム下面にボルト2本留めである。TT250R RAID のものはスイングアーム形状が異なるので取り付け不可。4RR2 のページで述べたように、編者は写真のようなアダプタを自作し、XRのものを流用して装着している。社外品では SCOTTS製のシャークフィンがあるようだ。
タンクグラフィック変更
樹脂製タンクは、揮発したガソリンによってタンク表面に貼られたデカールが剥がれてしまう。あまりに酷くなってきたので、貼り替えを検討したが、4PXA 標準のものは大変高価で躊躇していた。音叉マークとストロボラインがあれば良いと考え、約1/4の値段の PW80 のデカールを貼ることにした。注文した部品は以下の通りである。
名称 パーツ番号 備考 グラフイツクセツト 3RV-24240-A0 PW80 2004年式 エンブレム,YAMAHA 99241-00120 117×27mm(実測値) ヤマハのエンブレムは樹脂製タンク用ではないが、音叉マークだけでは寂しかったので、貼ってみた。
ガソリンを完全に抜き、約2週間乾燥させた後にデカールを貼り、更に約1週間乾燥させた後にガソリンを入れた。(2008年8月記録、2016年7月追記)
再びデカールが劣化したので、PW80 のデカールを貼り直した。前回貼ったものは販売終了だったので別の年式のものに、ヤマハのエンブレムはワイズギア扱いのものにした。購入した部品は以下の通りである。なお、おそらく紫外線の影響のためか、樹脂製タンクはだんだん白くなってくる。これはどうしようもないものと思っていたが、試しに粗目のコンパウンド(ホルツ製 品番MH926 品名コンパウンドミニセット の粗目)で研磨したところ、面白いように白い部分が取れた。コンパウンドで取れることが分かったので、プロスタッフ製の油膜取りキイロビン120 で研磨すると、元通りというわけではないが気にならない程度まで取ることができた。キイロビンの主成分は酸化セリウムで、ガラスの場合には化学反応を起こしながら研磨する効果があるようだが、これが樹脂に対してどのような影響を及ぼすかは不明である。(2016年7月記録)
名称 パーツ番号 備考 グラフイツクセツト 3RV-24240-B0 PW80 2005年式 YAMAHA エンブレムセット ホワイト M Q5K-YSK-001-T57 100×22mm(カタログ値) 再びデカールが劣化し、15年近く使用したタンクも白い個所が増えてきた。今後の部品供給に不安を感じたので、新品の純正タンクに交換した。デカールは既に製造中止だったので、セカイモンで販売されているメーカー不詳の物を購入した。デカールは純正品よりやや厚さがあるように思われた。デカールのシート側は純正品と同様に角で折り曲げるような長さだが、厚さのため曲げるのが困難だったので、はみ出た部分は切断して貼り付けた。保護用の透明なシートには空気抜きの穴が開けられている。フューエルコックアッセンブリを古いタンクより移植した。コックとフューエルタンクとの合わせ面の Oリング、コック固定のスクリューのワッシャを新品に交換した。コックとキャブレータを繋ぐホースも交換したが、長めだったので適当な長さに切断した。(2021年4月記録)
シートカバー交換
油断してシートクリーナでの清掃をサボっていたら、皺の所に溜まった汚れた部分からシートカバーが破れかけてしまった。4PXAの標準のシートカバーはYAMAHAの文字も無いシンプルなものである。無地のままでは面白くないので、TT-R の文字の入った US仕様(5GF)のシートカバー(4GY-24731-90)を注文した。張り替えをお願いしたギャロップの店長によるとシートカバーが 1cm位余って困ったそうなので、US仕様はシートベースが異なるのかも知れない。興味が湧いたので、いくつかのモデルのパーツナンバーを調べた結果を以下の表に示す。4PXAのみ、シートASSY とシートカバーのパーツナンバー下2桁が異なるのが興味深い。表にはないが、部品情報検索によると 4GY-24731-80 というパーツナンバーが存在することが判った。
写真は予備の 4RR2 のシートを装着した上に張り替えたシートを載せたものである。国内仕様との相違点の項目で述べたように、国内仕様のシートの装着には問題が無い。乗った感じも 4PXA と同じであり、4PXA のシートベースは国内仕様と同じと思われる。
車体型式(年式) カラー名称 カラータイプ 文字 シートASSY シートカバー 4GY1(1993) パープリツシユ ホワイト ソリツド 1 バイオレット YAMAHA 4GY-24730-00 4GY-24731-00 パープリツシユ ホワイト ソリツド 1 マゼンダ YAMAHA 4GY-24730-30 4GY-24731-30 4RR1(1995) パープリツシユ ホワイト ソリツド 1 バイオレット YAMAHA 4GY-24730-00 4GY-24731-00 パープリツシユ ホワイト ソリツド 1 レッド YAMAHA 4GY-24730-50 4GY-24731-50 4RR2(1997) デイープ バイオレツト メタリツク 1 - YAMAHA 4GY-24730-00 4GY-24731-00 ブルーイツシユ ブラツク 2 - YAMAHA 4GY-24730-70 4GY-24731-70 4PXA(2004) DEEP PURPLISH BLUE SOLID E - 無し 4GY-24730-D0 4GY-24731-C0 5GF(2000) - - TT-R 4GY-24730-90-00 4GY-24731-90-00 5GF(2002) - - YAMAHA 4GY-24730-A0-00 4GY-24731-A0-00 5GF(2004) - - 無し 4GY-24730-C0-00 4GY-24731-C0-00 Y'S GEAR
WRルック外装キット- - TT-R 4GY-24730-80 - ヘッドライト交換
国内仕様との相違点の項目に記載したように、4PXA 装備のヘッドライトは大型でアナログメータ装備に伴い前方に移動し、フロント周りの軽快さが失われている。そこで、WR400F(5BF) のものに換装した。これは、ワイズギアより発売されていた WRルック外装キットに含まれていたものと同じである。元々は 4RR2 に装着していたもので、取り付けに必要なステー類はその際自作したものを流用した。4RR2 に装着時には変換コネクタを自作したが、4PXA のヘッドライトのバルブは H4 なので、コネクタはそのままで良い。装着のためには、メーターを小振りのものに変更する必要があり、これはメーター変更の項目に記載した。写真では 4RR2 で GALLOP-X ED in KAWAUCHI に参加した際のゼッケン、2003年、2004年、2005年のチーム大和のツーリングに参加した際のゼッケンが貼られたままである。購入部品を以下の表に示す。
名称 パーツ番号 個数 HEADLIGHT UNIT ASSY 5BF-84310-00 1 BODY ASSY 5BF-84330-00 1 BOLT SPECIAL 55U-84337-00 2 SCREW, ADJUSTING 5BF-8433E-00 1 SPRING 5BF-84335-00 1 NUT, ADJUSTING 5BF-84334-00 1 GRAPHIC 1 5BF-2339E-00 1 メーター変更
ヘッドライト交換のためにメーターを変更した。小振りのものとして ACEWELL製の MD-052-353 を選択した。これは、スピードメーター以外にオドメーター、トリップメーター、時計、電圧計、タコメーター、水油温計 を装備している。更に、LEDのニュートラル、ウインカー、ハイビーム、オイルのインジケーターランプを装備して、直径 52mm という筐体の小ささが特徴である。
メーター本体とメーターワイヤーセンサーを 1.5mm厚のアルミニウム板に搭載した。本体にある固定用の M5×15mmのボルト 2本に付属のゴムブッシュを挟んでアルミニウム板に固定した。
MD-052-353 に装備されているトリップメーターは 1系統だけである。トリップメーターとして用いるには勿体無いが、いわゆるラリーメーターコンピュータとして rc-Design(現プロテクタ)製 rc-7 を選択した。M5×20mmのボルト 2本に付属のゴムブッシュを用いず、ゴム板を挟んでアルミニウム板に固定した。この項目を執筆時の 2018年6月現在では、未配線である。2019年5月に配線した。減算可能なトリップメーターが2系統、燃料トリップメーターが1系統、オドメーターを装備している。(2018年6月追記)(2019年5月加筆修正)
リアクッションO/H
4PXA で約10年、4万km を走行する間に足周りのメンテナンスとして、フロントフォークのオーバーホール(O/H)やリアリンク周りのベアリング類交換等をギャロップにお願いしてきた。執筆時の2016年7月現在では 65,556円と大変高価であるリアクッションアッセンブリを、交換ではなく O/H することにした。そこで、雑誌にも広告が良く掲載されている埼玉県春日部市にある、バイク用サスペンションのメンテナンスで有名な Technix に依頼した。
自分でリアクッションアッセンブリを取外し、更に上部ピローボール両端にはまっているカラーとシートを取り外して、6月初旬に営業所へ持ち込んだ。営業所には小奇麗なショールームもある。その場で見積りと納期約2週間程度との説明を受けた。翌週、ロッドにわずかな点錆が見つかったので再鍍金するか、研磨で済ますか問合せの電話がかかってきたので、再鍍金でお願いした。7月頭に O/H 完了の電話がかかってきて、翌日宅配されてきた。
交換部品は、オイルシール、ダストシール、シャフトブッシュ、ボトムストッパー、シールケースOリング、の5点だった。ボトムストッパーは汎用品との説明だったが、純正と似た形状である。リザーバータンクには Technix のステッカーが貼ってあった。料金は税抜きで O/H が 17,000円、ロッド再鍍金が 12,000円、春日部から日立への送料が 800円、プラス消費税で総計 32,184円だった。
スターティングモーター交換
スタータスイッチを押してもスターターリレーの動作音がするだけで、スターティングモーターが回らないことが増えてきた。この場合、スターティングモーターかスターターリレーの故障のどちらかだが、15年間で走行距離 5万km なので不良個所を特定せず、部品が供給される内にまずスターティングモーターを交換した。画像をクリックすると拡大する。
スターティングモーターを交換しても動作しないことがあり、更にスターターリレーを交換した。(2021年7月追加)
ブローバイガスタンク
ブローバイガスとはシリンダーとピストンの隙間からクランクケース内部へ吹き抜けた混合気のことである。市販車では当然の事ながら大気開放しないように、エアクリーナケース等に戻すよう工夫されている。TT250R の場合にはブローバイガス還元装置(タンク)を介してエアクリーナに戻されているが、4GY1 では取り出し口がクランクケース上部にあるのに対し、4RR1 以降では取り出し口がシリンダーヘッドカバーからに変更されている。
このタンクは車体左側のエアクリーナケースとキャブレータの間に設置されている。TT250R は空冷のためか、このタンクにブローバイガス中に含まれるオイルミストから分離した液体が溜まり易い。たまにはタンク下部のドレンパイプを外し、このオイルミスト液体を除去したい。清掃をさぼっているとエアクリーナケース内が汚れ、エアフィルターが油まみれになってしまう。特に気温の低い季節にはオイルミスト液体の量が増える。(2015年10月修正)
スライドピン
TT250R のブレーキキャリパーのスライドピンは部品単体の設定はなく、錆びついた場合にはアッセンブリ交換となる。ヤマハがそういうポリシーなのかというとそういう訳でもなく、WR250R 等はスライドピン単体で購入可能である。この車種に限らず気を付けたい箇所のブレーキの項目で述べたように点検すべき部品であるが、ユーザーにとっては部品が単体で購入できる方が嬉しい。他社の部品が流用できる可能性を知り、調査した。
気を付けたい箇所
この項目では、注意しておくべき箇所について述べる。
- エンジン
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TT250R について記してあるページを検索すると、オイル漏れが持病のように書かれているページが多くみつかる。編者が経験したのは以下の3ケースだけである。一つ目は、4GY の項目に記したシリンダからのオイル漏れで、これは極初期型の特定のロットのシリンダに限って問題があり、シリンダとクランクケースの合せ目からオイル漏れして、スタータ関係のギアの対策部品交換と同時にシリンダを交換したと記憶している。二つ目は、4RR2 でデコンプアーム取付け用ボルトからのオイル漏れである。三つ目は、2006年から乗り始めた4PXA で2012年になってデコンプアーム取付け用ボルトからオイル漏れしたケースである。また、化学合成油は空冷エンジンに向かないと言われるようだが、編者はMOTUL 300V を使い続けて特に不具合の経験は無い。空冷エンジンはオイルの劣化による冷却効果の低下が懸念されるので、オイルの管理には気を使いたい。
オイル漏れが持病と言われることについては、例えば、2ちゃんねるバイク板の「【無印】YAMAHA TT250R & Raid 10台目【レイド】」のスレッドの939氏の発言、「YAMAHA TT250R & Raid 14台目」 のスレッドの863氏の発言のような意見を参考にして欲しい。
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デコンプアーム取付け用ボルトからのオイル漏れ については 4RR2 のページに記した。
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4GY の項目に記したように、極初期型はスタータ関係のギア(ギア,アイドラ 1、ギア,アイドラ 2)の強度に問題があり、途中から対策部品に変更されている。編者の記憶では特にリコールの対象とはならなかったので、中古車体を入手した場合には注意が必要と思う。検索すれば対策前後の写真を掲載しているページが見つかる。対策部品はギアの形状の変更され、溝が入っているようである。また、ギア比も変更されている。
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オイルクーラの項目に記したように、装着時にはクランクケースカバー内部のボルトを交換して、オイルラインを変更することになる。中古の車体を購入してオイルクーラーが無い場合に、もしオイルクーラーを取り外してクランクケースカバー内部のボルトを元の長さのものに戻していないなら、オイルエレメントにオイルが流れないことになり、焼き付いてしまう。この点検にクランクケースカバーを外す必要は無く、上側のオイルラインのボルトを外してみれば良いだろう。
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- 吸気
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オーバーホールでもしない限り点検することはほとんど無い箇所と思うが、キャブレータとシリンダを接続しているキャブレータジョイントは経年変化によって金属部分からゴム部分が剥離することがある。剥離するとその隙間からいわゆる2次エアを吸い込むようになり、アフターファイアが出ることで気付くだろう。当然の事ながら、ここから砂や埃も吸い込まれるのでエンジンにも良くない。
パーツクリーナをこの付近に吹きかけてみて、回転が上昇すれば剥離の疑いがある。交換にはキャブレータを外す必要があるが、そのためには左側のシートサブフレームを外してエアクリーナケースをずらす(便利な機構参照)とやり易い。
右の写真は 14年間で 50,000km 走行した TT-R250 のキャブレータジョイントである。ゴム部分での破れはフランジ部に一か所見られるだけだが、ゴム部分全体が金属部分から完全に剥離し、シリンダ側の合わせ面は錆びていた。新品は鍍金なのか塗装なのか分からないが、金属部分は緑色である。交換前にはアイドリング不調、アイドリングからアクセルを開けた時のストール、アフターファイア等に悩まされたが、これらがキャブレータジョイントの交換によって解消された。
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ある日駐輪時にガソリン臭を感じ、良く見たらオーバーフローしてガソリンが漏れていた。キャブレータは消耗品で、Oリング類やジェットニードル等が経年劣化していく。走行距離が 53,000km であったので、不良個所を特定せずに部品が供給される内にキャブレータごと交換した。オーバーフローの原因としてはニードルバルブやバルブシートの劣化、フロートの破損等が考えられる。フロートチャンバー内に侵入したゴミがニードルバルブ先端に挟まった場合のオーバーフローは一時的だが、今回そのようなことはなく継続的にガソリンが漏れた。写真はオーバーフローしたキャブレータから取り外したニードルバルブである。ゴム製の先端部分の段付き摩耗が原因の一つに挙げられるが、そのような摩耗は見られなかった。写真の左側にあるフロートアームと接する部分がスプリングによってアームと密着するようになっており、この部分の動作不良も有り得るらしい。ニードルバルブがキャブレータ本体に圧入されたバルブシートと接する部分の摩耗、バルブシートのOリングの劣化も疑われる。バルブシートの取り外しにはロッキングプライヤーが必要なくらい固着していたので、編者はこのOリングの劣化が原因と考えている。
ニードルバルブの脱着にはフロートを外す必要がある。径 2.30mm のフロートピンを外すのに、2mm のピンポンチを用いた。フロートピンはキャブレータ本体に圧入されており、車体左側から右側に向けて取り外す。組付けは逆に車体右側から左側に向けて圧入することになる。
便利な機構に書いたようにシートサブフレームを外しエアクリーナケースを外せば、キャブレータ本体の交換自体は簡単である。エアベントホースの取り回しがややこしく、末端にワンウェイバルブが付いているホースをエンジンとスイングアームの間を通すのに難儀した。車体上側に向かうエアベントホースはリアクッションとリザーバータンクを結ぶホースと干渉するので、取り外す前にホースの通し方を良く見ておくこと。
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スロットルバルブの張り付きについては 4RR2 のページに記した。4PXA のキャブレータを交換した際のスロットルバルブの写真を示す。
53,000km 走行時の 4PXA のスロットルバルブである。左からシリンダー側、エアクリーナ側、側面である。各写真はクリックすると拡大される。4RR2 のページのスロットルバルブの張り付きの項目に記したようにシリンダー側の剥がれが多いなど、摩耗の程度は似たようなものである。雨天での走行が無くなったので張り付きを感じる機会が減ったが、キャブレータの交換後にはアクセルを開けた時の引っ掛かりは減ったように思う。
4RR2 のページのスロットルバルブの張り付きの項目に掲載している 42,000km 走行時の 4RR2 のスロットルバルブの写真を再掲する。左からシリンダー側、エアクリーナ側、側面である。各写真はクリックすると拡大される。
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- 排気
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エキゾーストパイプはステンレス鋼製であり錆びる心配はほとんどないが、マフラー側は一般的な鋼であり、特にエキゾーストパイプの接合部の取り付けバンドには水が溜まって錆び易い。錆びを防ぐために浸透性潤滑剤を吹いた場合、ゴムや樹脂への悪影響が心配なので、編者は無溶剤タイプのシリコンスプレーを吹いている。耐熱ワックスもマフラーには効果的だが、このような入り組んだ形状の場合には、まめに掃除した方が良いと思う。
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- 車体
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フレームのリアクッション取り付け部は複数のパイプと共に溶接で接合され、荷重のかかる部分である。YAMAHA のフレームの溶接部はお世辞にも美しいとは言えず、錆び易い。この複雑な形状のため水も溜まり易い。特にシート下はシートを外して点検する必要があるので、錆びていることに気付かないことも多いのではないだろうか。オフロードを走行すると予想外に泥等がシートレールやタンク裏までも付着し易いので、たまにはシートとタンクを外して掃除してはどうだろうか。シートはボルト2本を外すだけだし、金属製タンクではボルト1本、樹脂製タンクではボルト2本とゴムバンドで留めてあるだけなので、大した手間ではない。当然のことながら、燃料コックをオフにして、燃料パイプを外すのを忘れないこと。
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フラップガードは、後輪の巻き上げる泥や土からリアクッションを保護する部品である。軟質プラスチック製で、エアクリーナケース下部にワッシャ付きの M6 ボルトで固定されている。このボルトをオーバートルクで締め付けると写真のようにガードが割れてしまう。割れ防止にカラーを用いる事を考え、ナンバーブラケットをフレームに固定するボルトに使用されているカラー(90387-06500)を流用し装着した。カラーの外径は10mmなので、フラップガードの取り付け部の孔を広げて装着した。
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メインスイッチとハンドルロックを分離してフレームのステム右側にマウントしているのが TT250R の特徴の一つである。当時の雑誌やヤマハニュース 1993 No358によれば、デジタルメータと共にハンドル周りの徹底した軽量化のために採用されたことが記述されているが、頻繁にハンドルロックする場合に使いづらいことは否めない。初期型ではハンドルロックを解除して、そのままキーを差し込んだ状態でハンドルを回転させるとキーがフォークチューブと接触して最悪の場合キーが折れてキーシリンダの中に残ってしまう。どのモデルからかは不明だが、4PXA ではキーが小振りになり接触しないようになっている。
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- サスペンション
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リアクッション取り付け部にはピローボールが採用されているが、ここに浸透性潤滑剤を吹いておくことは勧められない。ニ硫化モリブデンを含んだグリースタイプの潤滑剤の方がましと思うが、異音がする場合には交換すべきだろう。また、ピローボール両端にはまっているカラーが割れていないか点検したい。
カラーの取り外しには Φ10mm のベアリングプーラーが便利である。編者はストレート社のパイロットベアリングプーラーセット 8~25(mm) 19-603 を使用している。また、カラーの圧入には市販の M10 のボルトとナットで可能である。取り外した際には、ピローボールの外側にはまるスポンジ状のシートが破損していないか確認したい。
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写真はスイングアームのコネクティングロッド取り付け部分を下側から見たものである。コネクティングロッドはカラーを介さず、スイングアームを貫くシャフトとベアリングが接して取り付けられている。スイングアームとコネクティングロッドの間には数mm程度のクリアランスがあり、このシャフトが直接泥や水を被ることになる。シャフトが錆びていないか点検したい。
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リレーアームの拡大写真である。リレーアームはカラーを介してフレームに取り付けられている。リレーアームとフレームとの間には数mm程度のクリアランスがあり、このカラーの一部が露出している。
リレーアーム中央部分の、写真でシャフトが通っているのがコネクティングロッドと連結される部分である。この部分は長さの異なるカラーが両側から挟みこまれており、コネクティングロッド取り外し時に短いカラーが外れ易い。
写真のリレーアーム下端には、リアクッションユニットと接続されるピローボールが圧入されている。フレーム側と同様にスポンジ状のシートを間に入れてカラーが両側から挟み込んでいるが、このカラーはフレーム側とは異なり圧入されてはいない。
どの部分も泥や水を被るので、まめに清掃、グリスアップしたい。
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4RR1 からリアサスペンション各部にあったグリスニップルが装備されなくなった代わりに、ニードルベアリングは固形潤滑剤入り(ポリルーブ)ベアリングに変更されている。メンテナンスフリーを目的としているようだが、相手側カラー等にはグリースが不必要というわけではないので、リンクの分解、清掃は必須だろう。そもそもグリスニップルが装備されていても、泥や水の掛かる悪路の走行の多い場合には、グリスニップルからの注油だけに頼らず分解してメンテナンスすべきと考える。
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フロントホイールアクスルシャフトを固定するホルダに使用されているスタッドボルトを誤って折ってしまった事例が WWW上に散見される。ヤマハの場合、このボルトを単体部品として入手できない。このボルトを2ちゃんねるバイク板において、ホンダの部品番号 92900-060250E のスタッドボルト(6×25)で代用できるとの情報を得て、購入した。純正部品と比較してみると、若干長いが使用には問題なさそうである。ハンドルホルダでも同様だが、上側もしくは前側のクランプが密着するまで本締めしてから反対側を本締めするのが正しい。
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- ブレーキ
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ブレーキキャリパーのスライドピンも錆び付いていないか、点検すべき箇所だろう。リアブレーキの場合には、ホイールを外さないと点検できない。錆び付き防止には必ずブレーキ専用のグリースを用いること。一般的なグリースでは熱で流れ出して危険である。また、パッドを固定するパッドピンも点検すべき箇所である。カジリ等が見られたら、躊躇無く交換を勧める。なお、ピンの取り外しにはしっかりした T型レンチを用いること。力の加え難い工具ではなめ易くリスクが高い。 スライドピンの項目へ
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マスターシリンダーのピストンは消耗部品で、メーカーからアッセンブリとして交換部品が供給される。滑らかなタッチではなく、ゴリゴリとした感触であれば交換の必要があるだろう。交換してもタッチが改善されず、TT250R-Ti フロントブレーキOHを読んでブレーキレバーのピボットシャフトのガタによってピストンを真直ぐ押していないのではと思い、レバーとピボットシャフトを交換した所タッチが改善した。純正品でも社外品でもレバーにブッシュ等は装着されていないのでガタは出やすいと思われる。
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- 電装
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編者の記憶する限りでは TT250R 唯一のリコールが届出番号「リコール 国-0423-0」のスターティングモーターとバッテリーを接続するケーブルに関するものである。詳細は、国土交通省のリコール情報のページで車名を「ヤマハ」、型式を「4GY」で検索すると閲覧できる。ケーブルがリアクッションのホースと接触すると断線し、発火の恐れがあるのでケーブルをフレームに固定するように指示されている。
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高年式の車体の場合、ブラシ磨耗によるスターティングモーター動作不良も起こり得る。WWW 上には TT250R に限らず、このトラブルに遭遇した例が多く見つかる。YAMAHA 純正部品としてブラシ単体の設定は無く、ブラシホルダアセンブリでしか購入できないが、他メーカーのブラシを流用したケースもあるようだ。スターティングモーター動作不良の場合にブラシの点検も考えてはどうだろうか。 スターティングモーター交換の項目へ
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TT250R は制御弁式(VRLA)バッテリーを採用している。従来の開放式と異なり、バッテリー液を綿状セパレーターに染込ませ密閉型にすることで、倒しても液が漏れることがなく、これによって 90度回転して搭載することが可能となった。バッテリー搭載位置の自由度向上が、TT250R の足周りの性能向上に貢献していると言えるだろう。液漏れ軽減以外にもいくつかのメリットをバッテリーメーカーは強調している。しかしながら、経験的にVRLAバッテリーのようなメンテンナンスフリーバッテリーの寿命は予兆無く突然やって来る問題があると思う。レギュレータが故障してバッテリーに充電できなくなったり、バッテリーの不良がレギュレータの故障に繋がるので、レギュレータにも注意したい。
スターティングモーターが動作したり、しなかったり、回り方が弱々しかったり、いよいよこれはスターティングモーターの寿命がやってきたかと思ったが、単なるバッテリーの寿命だった。前回バッテリーを交換してから 8年近く経過していることが判り、交換したら復調した。GS YUASA は4GY から(正確には 2003年までは GS)ずっと使用しており、バッテリー関係のトラブルの経験は無い。高価だが品質が良いと思った。
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- エンジン
オプション
名称 部品番号 価格/円 スタンディングハンドル 4GY-W0735-00 1,900 リアキャリア 4GY-W0736-00
4GY-W0736-0114,800 バークバスター 4GY-W0744-00 13,500 エンジンガード 4GY-W0746-00 11,800 フロントディスクガード&フォークカバー 4GY-W0749-00 8,500 リアディスクカバー 4GY-W0786-00 8,500 オイルクーラーキット 4GY-W0793-00 不明 キックセット 4GY-W0795-01 19,500(税別)
ワイズギア2009年12月調べキッククランクアセンブリ 4GY-15620-00 - デコンプケーブル 90793-66766 - ※ 価格はキックキット以外ガルル1993年5月号記載値(おそらく税別)
※いくつかのパーツは色違いの設定あり参考ページ
- クマゴローさんのTT250Rオーストラリア仕様/コンペティションモデルインプレッション
- wanawanaさんのTT250Rのページ
- TMX のTT250R改造の歴史
- Brian氏の Yamaha TTR250 FAQ
- 網氏のバイクのページ
- 冒忙房のTT250R raidに他車種のオイルクーラーを改造してつける
- 非日常口のTT250R:オイルクーラ自作(1/2)
- yawing-out RELOAD
- 2ちゃんねるバイク板の TT250R 関係スレッド:過去ログはぴたはは氏のページ参照
- YAMAHA TT250R/Raid wiki
- 私的未舗装路日誌
- ヤマハニュース 1993 No358
- furasoraさんの内田輪店内のYAMAHA TT250R