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MAZDA CONNECT

このページでは MAZDA CONNECT について説明する。薄灰色背景となっている箇所は各文献からの引用を示す。


  1. 概要

    コネクテッドカー(1)という概念が何時からあったものなのか編者は知らない。2000年代には ICT (Information and Communications Technology、情報通信技術) という言葉が使われていたように記憶しているが、総務省のページ(2)を読むと日本では2000年に IT戦略会議設置(IT は ICT 以前に使われていた言葉)とあるから、この辺りから一般に普及し始めた言葉のように思う。コネクテッドカーとは、ICT端末としての機能を有する自動車のこととあってとりあえず、定義はこれで考える。2016年のパリのモーターショーで提唱された CASE(3) という言葉は「Connected(コネクテッド)」「Automated/Autonomous(自動運転)」「Shared & Service(シェアリング)」「Electrification(電動化)」というモビリティの変革を表す4つの領域の頭文字をつなげた造語で自動車業界は CASE に対応すべく大騒ぎしている。これはおそらく別々の概念ではなく、連携しているものと考えられる。こと電動化単体では LCA(Life Cycle Assessment)(4) を考慮すると、本当に二酸化炭素の排出削減の正しい解なのか疑問である。ただ、自動運転は車単体では困難だから ITS (Intelligent Transport Systems、高度道路交通システム)(5) を利用するためにコネクテッド領域の技術と連携し、自動運転の制御には内燃機関より電動化の方がやり易いと思われる。コネクテッドの既存技術として VICS(6) や ETC(7) は十分実用的であり、更に自動運転を目指すのがコネクテッドの方向と考える。

    MAZDA のコネクティッドに相当するシステム MAZDA CONNECT は 2013年に発売された AXELA (BM) に初めて搭載された(8)。当時コネクテッドの機能としてスマートフォンとの連携を謳っているものの特別優れた機能を搭載しているようには思えなかったのが正直な所である。しかし、この項目を書くために該当するマツダ技報(9),(10),(11)を読んでみると開発のポイントが次の3つであることが書いてあり、将来拡張するであろうコネクテッドに対して柔軟に対応できるシステムを構築していたことが分かった。

    1. 走行安全性を最優先した HMI(Human Machine Interface)
    2. 古くならないシステムの構築
    3. インテリアデザイン革新をサポートする

    走行安全性を最優先とするのが如何にも人間中心思想の MAZDA らしく、増えた情報量を安全にドライバーに伝えるためにどうすれば良いか検討し直している。その結果センターディスプレイとアクティブドライビングディスプレイが誕生した。詳細はヘッズアップコクピットで述べる。2番目の「古くならない」についてはハードウェアのモジュール化とソフトウェアをアップデート可能とすることで実現している。3番目の「インテリアデザイン」についてはシステムの中核である CMU(Connectivity Master Unit) とディスプレイの分離によってデザインの自由度を上げたということらしい。ICT は正に日進月歩だからシステムが陳腐化してしまうとまた一からやり直しということになりかねない。これを避けるように拡張性を持たせたシステムが MAZDA CONNECT と理解した。

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  2. ヘッズアップコクピット

    ヘッズアップコクピットとは走行安全性を最優先した HMI を持つコクピットのことである(10)。マツダ技報に依れば、センターディスプレイとアクティブドライビングディスプレイに加えてコマンダースイッチを含めたシステムを指す。マツダ技報ではこのシステムを構築するためにどのように開発したか事細かに記述している。大雑把に理解するには 2025年5月現在のマツダのWWWページにおいて「クルマづくり」「コクピット」(12)が分かり易く、「安全運転と情報操作を両立させる」という言葉を出して噛み砕いて説明している。もう少し詳しい説明は三栄書房のニューモデル速報第487弾(13)にある。走行情報と快適・利便情報をゾーンを分離して配置することにヘッズアップコクピットの基本思想がある。この情報を表示する場所を分離するという考え方は AXELA (BM) が最初というわけではなく、AXELA (BL) の MID(Multi Information Display)(14)で先行して実現していた。MID の画面サイズはモノクロが 3.5インチ、カラーが 4.1インチ(15)と初代 MAZDA CONNECT の 7インチのセンターディスプレイに比べると随分小ぶりだが、燃費情報、アイドリングストップ時間、メンテナンス情報等を表示していた。更にマイナーチェンジで詳細な燃費推移、履歴情報や i-stop の動作状況、i-DM のスコアとアドバイスを表示する機能(16)が追加された。また、ドライバーの注意力を妨げる要因として"見る脇見"、"意識の脇見"、"手の脇見"を定義し、それぞれについて対策してヘッズアップコクピットを構築している。例えば、"見る脇見"の対策としてセンターディスプレイの位置と大きさの決定、"意識の脇見"の対策としてゾーンを分けた情報表示の採用、"手の脇見"の対策としてタッチパネルではなくコマンダースイッチを採用する等のようである。

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  3. コマンダースイッチ

    コマンダースイッチはセンターディスプレイに表示される情報を操作できるスイッチ類で、コマンダーコントロールと書かれることもある。これらはセレクトレバーの後に置かれ、左手をフロアトンネルに下ろした際に自然に操作できる位置にある。コマンダーノブ、音量ノブ、複数のスイッチから成る。コマンダーノブは回す、傾ける、押すという操作で動かし、カーソルを移動させるのに用いる。PC のマウスとは異なりカーソルは上下又は左右の項目の移動しかできないから、今どの項目を選択しているか見失うことが無い。回す操作では数度ずつクリック感を持たせメカニカルな節度感があり画面を見ながらブラインドで操作しても不安が無い。コマンダーノブを囲うように5つのボタンが配置され、前方中央に「ホーム画面」へのボタン、前方右側に「ナビゲーション画面」へのボタン、前方左側に「エンターテイメント画面」へのボタン、後方右側に前画面に「戻る」ボタン、後方左側に「お気に入り画面」へのボタンを配置している。「ホーム画面」へのボタンはやや高くなっており、ブラインドでそれぞれのボタンが操作できるように工夫されている。2014年に DEMIO (DJ) に採用された際にはコマンダーノブの 1クリック分の角度を従来の 20度から 15度に変更(17)している。これはセンターアームレストがある AXELA に対し、それがない DEMIO への対応の一つで、代わりにパームレストを設置して操作性を同等にするための工夫である。AXELA はスペースがある分 1つのボタンの幅が広いが、DEMIO では狭くなっている。音量ノブは AXELAが「お気に入り」ボタンの左隣なのが、DEMIO では「お気に入り」と「戻る」ボタンの間になった等若干配置に違いがある。更に MAZDA CONNECT が刷新された MAZDA3(18) ではボタンの配置とコマンダーノブが変更された。更にコマンダーノブを囲うボタンは 4つとなり、「お気に入り」ボタンと音量ノブがコマンダーノブの左側に前後に配置され、「ホーム画面」へのボタンが後方左側になった。これは EPB(Electric Parking Brake、電動パーキングブレーキ) が採用され、パーキングブレーキがボタン操作になったことも関係していると思われる。コマンダーノブは大型化され表面がタッチパッドとなった。

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  4. アクティブドライビングディスプレイ

    アクティブドライビングディスプレイ(11)とはヘッズアップコクピットのコンセプトに基づき、ドライバ正面には走行系の情報に限って表示し、特に走行環境に応じて「刻一刻と変化する,走るための情報」は前方注視時の有効視野内にあるのが理想として開発したデバイスである。いわゆるヘッドアップディスプレイだが、ユニット開発にかける「投資,部品コストを最小限」にし、一度開発したユニットは「複数の車種に展開」できるような設計とした結果、2013年に開発された初期型はフロントウインドシールドではなくコンバイナに投影するタイプ(Cタイプ)(11)が採用された。虚像表示までの視距離は 1.5m に設定された。表示するコンテンツは車速、経路誘導(ターンバイターン)、アクティブセーフティ警告とした。アクティブセーフティ警告には車間認知支援システムやスマートブレーキサポート、クルーズコントロール等の作動状況も含む。表示にはドットマトリクスタイプで解像度 128×64 の VFDタイプを採用している。VFD とは Vacuum Fluorescent Display の略で蛍光表示管のことである。2016年の DEMIO の商品改良(19)モノクロ表示からフルカラー化、高輝度・高精細・高コントラスト化が行なわれ、視認性と読み取り易さを向上させた。運転中視線移動を最小限に留め、表示コンテンツとサイズを検討し直している。国内向けには 2016年にフルモデルチェンジした CX-5(20)安全情報表示の増加による表示サイズの拡大と更なる視認性と認知性の向上を目指し、遠方上方表示を実現するためにフロントウインドシールドに投影するタイプ(WSタイプ)(21)が上級グレードに採用された。虚像表示までの視距離は 2.5m に設定された。表示には TFT液晶を採用している。ウィンドシールドに投影するために表示補正機能と追加し、虚像が二重像にならないようにウィンドウシールドの中間膜を変更している。また、Cタイプに比べてWSタイプは外部環境の変化の影響を受けやすいので、表示輝度とコントラストを調整している。更に表示コンテンツと表示サイズ、方法まで再検討された。全ての変更は背反関係にある『視認性/認知性向上』と『煩わしさ低減』をどのように実現するかを考慮して決定している。

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  5. センターディスプレイ

    センターディスプレイは少ない視線移動で視野に入るように位置と大きさが決定されている。ダッシュボード上で距離が 750mm、この時読み取れる行数、文字高、行間から計算して 7インチと言うサイズが選択された。エンターテイメント機能、アプリケーション機能、コミュニケーション機能、ナビゲーション機能を有し、各機能や車両装備の設定機能を含む。狭義の MAZDA CONNECT とはこのセンターディスプレイを指すことが多い。基本的に操作はコマンダースイッチで行なうが、停車時にはタッチ操作も可能である。秀逸なのはリストに並べる選択候補の数は、人間が一度に把握できる数として、心理学的にマジカルナンバ 7±2 というものがあり,それを適用したことで、これによって選択肢がある場合に必要以上に画面を注視することなく選択できるようにしたメニュー形態である。また、縦や横に選択肢がある場合にコマンダーノブを左右どちらに回転させれば良いか分かるように選択肢に沿って円弧が引かれている。これらは使い込んでみるとその有難さが実感できる。2018年に発売された CX-9 に従来の機能に加えて Apple社の CarPlay、Google社の Android Auto が追加(22)された。このために USB-HUBユニットの内部回路を新設計、コマンダースイッチのみでも操作できるように各会社と協業している。また、CarPlay・Android Auto 接続中には MAZDA CONNECT の音声認識は起動しない、CarPlay・Android Auto のナビゲーションと MAZDA CONNECT のナビゲーションのルートガイダンスが重複しない設計が為されている。2018年の ATENZA の商品改良(23)で 8インチサイズのセンターディスプレイを採用しインテリアの広がり感とのバランスを取るとともに、操作性と視認性の向上させている。2019年に発売された MAZDA3 では MAZDA CONNECT が刷新(24)され、直観的なHMIとなることを目指し操作パターンを統一している。先の項目で述べたようにコマンダースイッチを刷新し、センターディスプレイをワイド化しているのが目立った変更点である。

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  6. 参考ページ

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