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MX-30 Rotary-EV 試乗 2024/3/4(月)

e-SKYACTIV R-EV エンブレム

MX-30 Rotary-EV は 1ローター 833cc のロータリーエンジンで発電機を動かして発電し、出力 125kW のモーターでタイヤを駆動するシリーズハイブリッドモデルである。17.9kWh のリチウムイオン電池を搭載し、一般家庭でも充電可能な PHEV(Plug-in Hybrid Electric Vehicle) であり、発電機を搭載しているのでレンジエクステンダーとも呼ばれる。編者はこのあたりの呼び名の使い分け方を良く分かっていない。PRIUS の PHEV モデルではエンジン出力を駆動に用いるのに対し、MX-30 Rotary-EV では発電だけなのとシリーズハイブリッドである NOTE e-POWER のリチウムイオン電池容量が 1.5kWh であるのに対し、MX-30 Rotary-EV ではバッテリーのみで 107km走行できる(カタログ値)電池容量という違いもある。車両重量がマイルドハイブリッドモデルが 1460kg、EVモデルが 1650kg、Rotary-EVモデルが 1780kg (いずれも 2WD仕様)とパワーユニットによって大きく異なり、重い Rotary-EVモデルが運動性能では不利になりそうだが、日立市内で試乗した限りではモーター駆動による低速での力強さと滑らかさに魅力を覚えた。2023年7月に北関東マツダひたちなか田彦店で CX-60 の各種モデルを試乗した時に MX-30 のマイルドハイブリッドモデルにも試乗して軽快感を覚えたが、i-DM を意識するようになってからは運転操作に対するレスポンスよりもリニアに反応するかどうかに意識が向くようになったので、車両を評価する視点が変化していることを考えるともう一度マイルドハイブリッドモデルに試乗しないと比較ができない。

ローターモチーフエンブレム

内燃機関を用いて発電した電力でモーターを駆動する場合エネルギー変換があることによって効率が落ちると考えがちである。しかし、内燃機関の場合、発進時、巡行時等それぞれの回転数で効率が異なるし、シリーズハイブリッドのように効率の良い回転数で発電すれば、トータルでは効率を低下させずに済むようである。純粋な EV の場合、充電設備の普及がガソリンスタンドほどではないし、災害時の電力の供給に不安がある状況で給電可能としたシリーズハイブリッドは有効な選択肢の一つではないかと思う。また、ロータリーエンジンは同出力のレシプロエンジンに比べてコンパクトという利点もある。取扱説明書にあるように MX-30 の走行モードは「CHARGEモード」「NORMALモード」「EVモード」の3種類がある。発電した電力を走行以外に使いたいのなら「CHARGEモード」、長距離を走りたいのなら「NORMALモード」、走行時に排気ガスを出したくないのなら「EVモード」という使い分けだろうか。普段は家庭で充電して EV として走り、長距離を走りたい場合にはシリーズハイブリッドで走る、というのがメーカーの想定した使い方と理解した。今回の試乗では高速道路とワインディングを「EVモード」で走行する際のフィーリングをチェックすることにし、急加速、急減速を避け、i-DM でホワイトランプの点灯しない運転を心掛けた。

北関東マツダ日立店

事前に北関東マツダ日立店で3月3日の夕方に借りて、4日夕方に返却することを打ち合わせておいた。当日は試乗にあたっての誓約書と MAZDA 2 の預かりに関する書面に署名した。使う分だけガソリンを補給するのだと思っていたら、満タンで渡され、返却時に満タンにするよう書いてあった。また、Rotary-EV に関する簡単な説明書もあった。フューエルリッドの開け方は、運転席手元のボタンを押すとメーターパネルに「給油準備中です」と表示された後に「給油可能です」と表示されリッドの右端を押すと開く、と説明を受けた。また、「EVモード優先」に設定(注1)されているとのことだった。日が暮れるまで、この記事を書くために何枚か撮影した。走り出す前に説明書の冒頭にある「マツダが推奨するドライビングポジションへの調節手順」を見ながらシートとステアリングの位置を調整した。編者がマツダの車に乗り続ける理由の一つがシートの出来の良さである。LANTIS のカタログに「形成医学シート」なる単語で説明があったように長時間の運転でも疲れないように身体を支えてくれるし、また運転中の横G にも身体がぶれることもない。最近のマツダの車は特にランバーサポートがしっかり腰を支えてくれるように思う。ちゃんと座れば運転がし易く疲れないので、慎重にポジションを調整した。

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さて、日も暮れて日曜日の夕方には道路も空いてきたので出発した。ブレーキペダルを踏みながらパワースイッチを押すとハイブリッドシステムが始動してメーターパネル内に緑色の「READY」の文字が表示される。ここでエンジンが稼働するわけではないので、静かなままなのが違和感がある。マルチインフォメーションディスプレイの駆動用バッテリー残量を見ると 19% だったので、走行モードを「CHARGEモード」に切り替えた。するとセンターディスプレイに充電上限値を変更するかどうかメッセージが表示される。何も操作しないとそのままメッセージは消える。「CHARGEモード」であってもある一定の速度以下ではエンジンは停止したまま、即ち車両を停止する前にエンジンが停止し、発進してしばらくしてからエンジンが始動する。オートエアコンの設定温度が低かったので 25.0度に設定し ECOモードを OFF にした。R6を北上し桐木田の交差点を左折し、県道36 に入った。前年の土砂災害で 3か所の片側交互通行が設定されていたが、日昭丸運前後の片側交互通行は解除されていた。ステアリングホイールパドルによって減速力と加速力を 5段階に切り替えることができる。減速力を強めるとあたかもシフトダウンしたかのような挙動となるが、本山トンネルまでの登りで試した所効きが強過ぎるように感じた。MAZDA 2 よりもアイポイントが高いせいかロールが大きめに感じるが、思ったように曲がる様子は同じだった。近年観光客の増えた御岩神社を過ぎて入四間の交差点を左折し、グリーンふるさとラインに入った。北沢に向かう長い下り坂で減速力を一番強めてみたが、やはり効きが強すぎて結局中間の設定で特に問題が無いと感じた。これは電動車独特の感覚で、変速機の切換え無く走行できるのは便利だと思った。R349 を横切って十石トンネルをくぐり、前沢で左折、南下して大門で県道29 へ左折、常陸太田市の中城町交差点を左折、R293バイパスを南下して県道156 で石名坂から R6 に戻って帰宅した。このルートは i-DM の練習にも丁度良いワインディングで良く走るから、試乗してハンドリングを評価するのに最適である。先に書いたようにロールが深め以外に違和感も無いが、ステアリングホイールパドルを使って減速力を強めると同時に加速力が弱まるのでコーナーの立ち上がりでステアリングホイールパドルの操作が必要なのは面倒に感じた。普段 MAZDA 2 ではマニュアルモードでシフトダウンしてセレクトレバーをドライブに戻すと自動でシフトアップするからである。この記事を書くために取扱説明書を読み直すとプラススイッチを押し続けて解除できることが分かった。車体と車重が大きいにもかかわらず MAZDA 2 と同じように走れて満足した。この日は 54km 走行して駆動用バッテリー残量が 65% となっていた。

笠間PA

翌 4日は平日で通勤時間帯の日立市内の混雑を考えて 7時過ぎに出発した。EV モードで R6 を南下、日立南太田IC から常磐道に入った。ETC車載機は搭載されていないので、一般ゲートで通行券を受け取った。合流の加速は十分で、平均速度が上がるとバッテリーによる走行可能距離と駆動用バッテリー残量が目に見えて減っていった。瞬間電力消費率は横方向のバーで表示されるが、これは小さくて視認し難くチラチラ動く。平均燃費表示、平均電力消費率は目に見えて変化することは無かったが、瞬間電力消費率については余り意識しなかった。この数字とメーターパネル左側のパワーメーターを意識すると燃費と電費の改善に役立つかもしれない。友部JCT から北関東道に移り、笠間PA で休憩した。休憩したいというより合流での加速をチェックしたかったのだが、2度目でも特に問題は無かった。EVモードで走行していると、その内駆動用バッテリー残量が 0 に近づく。バッテリーによる走行可能距離が 1km を表示して暫くするとマルチインフォメーションディスプレイ内の EV表示がグレーアウトし、エンジンが稼働したことを示すローター型アイコンが点灯し、ブーンというエンジン音が聞こえてくる。このエンジン音は不快なものではないが、常に発電用の一定回転数で稼働する(注2)ので違和感があり、一日の終わりにはモーター駆動時の静かさに反して煩い音として聞こえてきた。アクセルペダル操作に比例しない音だからだろうか。走行モードが「EVモード」のままだとバッテリーによる走行可能距離が 1km で駆動用バッテリー残量が変わらないままだが、「NORMALモード」に切り替えると駆動用バッテリー残量がじわじわと増え始める。走行モードを「CHARGEモード」に切り替えると駆動用バッテリー残量の増加速度が速くなった。また、この時の駆動用バッテリー残量は 20% 程度だったと思う。今時の内燃機関車のエンジン音、排気音は煩くないので、モーターだけで走行して静かなのも不思議に違和感が無かった。特に高速道路ではロードノイズの方が煩く感じるので、動力性能の十分なモーターも予想以上に良いものだと思った。

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道の駅サシバの里いちかい

宇都宮上三川IC で北関東道を降りて R4 を北上し、これ以降は一般道の走行とした。普段 ETC に慣れているので精算機に通行券と ETCカードを挿入するのは面倒だった。オートエアコンの設定が 25.0度のままでは結構暑く感じるくらいだったので 24.5度に切り替え ECOモードを ON にした。昼過ぎに設定温度を 24.0度として丁度良いくらいでエアコンの効きは良かったが、その分電力を消費しているのだろう。再び走行モードを「EVモード」とした。石井交差点を右折、R123 を東進して新開運橋を過ぎて左折、県道156、165 から上赤羽交差点を左折、祖母井南一丁目交差点を右折、県道69 を東進して道の駅サシバの里いちかいで休憩した。途中工事渋滞があってノロノロ進んだ時があったが、極低速で発進、停止を繰り返しても違和感が無い、どんな領域でもアクセルペダルとブレーキペダルの操作に対する挙動に違和感が無い。ワインディングでは当然の操作性で、極低速でもギクシャクすることもない統一感あるドライビングフィールということだと思うが、それよりも内燃機関車から乗り換えても同じ感覚で運転できるのは素晴らしい。モーターの特徴として発進時に最大のトルクを発揮できることが挙げられるが、思ったより加速することもない。ここに到着するまでにバッテリーによる走行可能距離が 1km になった時には駆動用バッテリー残量は 10% 程度で、走行モードを「CHARGEモード」に切り替えた。再びグリーンふるさとラインを走るつもりだったが、どこかで昼食を採ってから北関東マツダ水戸店に寄ることにした。そのまま県道69 を進み R123 に移り、道の駅もてぎを過ぎて神井大橋交差点を右折して県道51 に入った。ここから水戸市内までは適度にアップダウンしたワインディングであり、アクセルを踏みたくなるが道端に速度超過取締り機器を見掛けて自重した。県道51 に入ってから後続にオープンカーが居るのが分かったので道を譲ったら車高を落とした ND型ROADSTER で、この車の後ろでほとんど信号も無い道を穏やかなペースで走行した。結局 R123 に入って渡里町まで一緒だった。この区間で勾配の急な箇所もなく登りも下りもステアリングホイールパドルを使うこともなく、淡々と走った。幸楽苑水戸末広店で昼食にし、「EVモード」で発進して末広町一丁目を右折、混雑した県道342、50 を南下して北関東マツダ水戸店に到着した。

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北関東マツダ水戸店

北関東マツダ水戸店は黒い外装が特徴である。マツダのディーラーが全て黒い外装になるかと思っていたが、日立店は白い外装のままである。黒い外装はある種の高級感を覚えるものの編者にとっては日立店の方が居心地が良い。水戸店は以前店内が薄暗い印象があったが、今回はそうではなかった。ここには以前日立店で編者の担当だった営業がマネージャーとして勤務している。この人とはつき合いが長いので話しをすると安心する。また、同じく日立店でサービスだった人がおり、Rotary-EV について色々説明してくれた。事前の検索で MX-30 のマイルドハイブリッドモデルがあることが分かっていたので試乗した。ここは市街地なので、日立店のように曲がりくねった道や登り坂を試すことができない。日立店は試乗に向いた場所だと思う。結局印象は以前と同じ軽快感で運転操作に対する反応も Rotary-EV と同じ自然なものだったが、軽快感とは MAZDA 2 のディーゼルエンジンモデルに対するガソリンエンジンモデルの違いのようなものと思った。普段日立市内を移動するだけならマイルドハイブリッドモデルくらいの車重の方が気楽だろう。かといって長距離移動に Rotary-EV の車重が必要か、というとそうでもない。今の編者の使い方にはディーゼルモデルの MAZDA 2 が合っているのだと思う。編者は信号待ちでセレクタレバーをニュートラルにして、サイドブレーキを掛ける習慣がある。MX-30 ではサイドブレーキではなく EPB(電動パーキングブレーキ)で、試乗の際これを使っていたらオートホールドの使い方を教えてもらった。これはスイッチ操作でフットブレーキを維持してくれ、アクセルペダルを踏みこむことで解除されるが、編者は常用するにはちょっと不安を覚えた。

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セイコーマート水府中染店

再び「EVモード」で発進し県道50 を北上して、千波山交差点を右折、本町まで東進してから東台一丁目交差点を越えて石垣橋を渡りおおぬきARTクリニック北側を通って、那珂川右岸の道を北西に向かい、再び R123 に戻ってきた。城里町に入った所で右折して那珂川を渡り、すぐ左折して県道102、61 から静入口交差点を左折、R118 から常陸大宮市役所をかすめて、久慈川を越えた所で左折すぐ右折、玉造十字路までの道もアップダウンのある気持ちの良い道である。R293 よりも空いており曲がりくねっていて楽しい。常陸太田市役所金砂郷支所傍の池には白鳥が飛来していた。玉造十字路を左折、和田交差点を左折、松平交差点を右折して県道33 を北上し、西染入口のセイコーマート水府中染店で最後の休憩をした。MX-30 は SUV に分類されるが、アイポイントがそれほど高くなく視界が広く市街地でも郊外でも気持ちよく運転できる。流石にちょっと草臥れてきた。ここまでのどこかでバッテリーによる走行可能距離が 1km になった時には駆動用バッテリー残量は 2% 程度で走行モードを「CHARGEモード」に切り替え、バッテリーによる走行可能距離が 40km になった時、「EVモード」にして日立に帰ることにした。

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北関東マツダ日立店

さて休憩後は当日最後に試したかった狭い道のワインディングである。中染交差点を右折して県道36 にほとんどセンターラインが無く、竜黒磯トンネルまでだらだらした登り、トンネルを過ぎて下って里美大橋入口交差点を左折、R349 を北上してガソリンスタンドのある上深荻交差点を右折すると県道60 もほとんどセンターラインの無い狭い道で 小さな R のコーナーが続く。車幅が気になるが、R が小さくても軽快感は変わらない。高原で右折してグリーンふるさとラインはスピードの乗るコーナーが多い。笹目牧場への登り区間は S字が続く急坂だが、気持ちよく走れる。これを過ぎると入四間まで急坂の下りでステアリングホイールパドルを操作する必要も無い。シフト操作が好きで MT を選択する人が居るが、この車に乗ったらどのような評価をするのだろうか。編者は MAZDA 2 だとマニュアルモードを積極的に用いるが、アクセルとブレーキの操作だけで走れるワインディングも悪くないと思った。入四間の交差点を左折して県道36 で日立市に戻ってきた。日立で一番近いワインディングはこの県道36 でありよく走るが、MAZDA 2 と同じように走れると思った。というよりも、マツダの車はどれに乗っても運転する感覚がどれも変わらない。短時間の試乗では「硬い」と評されるマツダの車の乗り心地については、ふわふわせずに落ち着いているというべきだろう。シートと共に引き締まった足周りが長距離移動を楽にしてくれる。これが編者がマツダの車に乗り続けるもう一つの理由である。R6 に出てガソリンを給油し、北関東マツダ日立店に到着したのは 16時ちょっと前、運転している間はさほど疲れを感じなかったにもかかわらず店内の椅子に座ったら急に疲れが出てきた。緊張が切れてしまったのだろうか。ゆっくり休んでから帰宅した。4日の走行距離は 263km、二日間の総走行距離は 317km だった。

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以下はその他の感想である。

フリースタイルドア

MX-30 の特徴のフリースタイルドアである。これは RX-8 で採用された観音開きのドアと同じで 2ドアモデルの後部座席の乗り降りを改善するためにドアを前後に分割したと理解している。写真のように通常のヒンジ式ドアよりも開く角度が大きい。開口部が広く、Bピラーが無いため車体剛性の低下が懸念されるが、編者が試乗した限りでは不安に感じることは無かった。編者のようにカメラバッグや三脚を後部座席に置いた場合には出し入れが容易になる利点はある。前部座席の乗り降りに不便は無かったが、後部座席から降りる際に頭をぶつけやすかった。

モータールーム

モータールームを車体右側から眺めたものである。最近の車両は騒音対策のためか内燃機関車であってもシリンダーヘッドが見えずカバーが掛かっており、Rotary-EV であっても同様にカバーが掛かってパワーユニットがあるように見えない。MX-30_Rotary-EV 広報資料 (2023.9.14)によると、e-SKYACTIV R-EV のエンブレムの下に一体化した駆動用モーター、減速機、ジェネレーター(発電機)、 8C-PH型発電用ロータリーエンジンが収まっている。オイルレベルゲージとオイルフィラーキャップぐらいしかエンジンの存在を示すものが無い。オレンジ色の太いケーブルが駆動用バッテリーに繋がっている。手前に見える配管はモーターの冷却用だろうか。素人目には隙間が結構あるように見えるが、同出力のレシプロエンジンを搭載するスペースは無いというのがメーカーの説明である(注3)。また、モーターは EVモデルの 107kW よりも高出力な 125kW である。最大トルクは 260N・m で発進加速、高速での追越し加速、勾配の急な坂での加速に不満を感じることは無かった。先に書いたように回生ブレーキの効き具合も調整できるが、標準で違和感は無かった。

フローティングコンソール

MX-30 のインテリアの特徴の一つであるフローティングコンソールである。セレクタレバーの前方にはエアコンやシートヒーター等の操作パネルが見える。編者はタッチパネルという操作が嫌いだが、使用頻度の高い操作は機械式スイッチ、使用頻度の低い操作はタッチパネルという組合せは良いと思った。ただ、この一等地に大きな操作パネルが必要かというと疑問でスペースの使い方としてはまだ工夫の余地があるのではないだろうか。セレクタレバーはパーキングのみ右方向に動かし、それ以外は前後に動かす方式である。試乗の範囲だと前方に動かしてパーキングに入ったような気持ちになってしまうことがあったが、これは慣れで解決できるだろう。セレクタレバーの後側にマツダコネクト用のコマンダースイッチが見える。最近のマツダの車はオーディオやカーナビゲーションシステムの操作は勿論、車両装備の設定や i-DM、燃費のモニター等の操作もこのコマンダースイッチを用いる。編者の MAZDA 2 とスイッチの大きさ、配置が異なっても操作に悩むことは無かった。写真では写っていないアームレストを兼ねたコンソールボックスの蓋と同じ高さのコマンダースイッチは操作性が良い。フローティングコンソールとコンソールボックスの間にアジャスト機能付きカップホルダーの蓋が見える。この辺りにコルクという車では見掛けない素材を使ったのは MX-30 の売りの一つだが、経年劣化の心配は無いのだろうか。試乗車ということもあって軌跡記録用のスマートフォンの設置場所に悩み、この蓋の上に置いて衛星の受信に問題無かった。飲料缶はドアのボトルホルダーに置いた。MAZDA 2 は収納スペースが少ないので、MX-30 は沢山あって羨ましい。

電源ソケット

DC12V のシガーソケット、AC100V の電源ソケットはフローティングコンソールの陰にある。シガーソケットで写真のようなダイレクトタイプの分配機の場合フローティングコンソールとの間の空間が狭いので使い難い。また、USBポート等もここにありアクセスは悪い。しかしながら、これらは安全面から運転中にアクセスすべきものではないのでこのような配置に納得がいく。試乗時には気付かなかったがここの収納スペースは結構広い。

今回はステアリング、アクセル、ブレーキの各運転操作に対する応答や乗り心地等に主眼を置いたので、燃費、電費等はほとんど意識しなかった。満タン法で測定すると走行距離 311km に対してガソリン 32.69L を給油したので、燃費は 9.5km/L となる。予想以上に良くない値となった理由としては、「CHARGEモード」を多用したこと、回生ブレーキを積極的に使用しなかったこと、高速道路の走行が 84km あったことを考えている。また、ヘッドライトを常時点灯したことやエアコンの設定温度も影響していると思う。シリーズハイブリッドとして評価するなら「NORMALモード」で走行すべきだった。そうは言ってもカタログ値で WLTCモードで 15.4km/L という値はそもそも高い数字ではない。これについて色々検索した所、池田直渡氏の復活のロータリー 「ROTARY-EV」で、マツダは何をつくったのかという考察が当たっているのではないかと思う。付け加えるなら、ロータリーエンジンの技術の継承という目的もあるのではないだろうか。使い方を間違えると評価の下がる車だと思う。航続距離を伸ばす方法について取扱説明書に記述がある。

編者はエネルギー密度の低い、つまり後続距離を延ばすために容量を増やすと重量の嵩むバッテリーが嫌いである。バッテリーの製造過程に与える環境負荷や寿命が短いことにも疑問を感じる。運動性能の面でも軽量な車の方が良いし、トータルでの環境負荷は低くなるのではないかと考えている。形式をシリーズハイブリッドとし EV として走行可能な距離が 100km 程度になるような容量のバッテリーを搭載し、燃料によって長距離走行も可能にした車両と理解するが、もう少し車重を軽くして欲しい。バッテリーの容量を減らしていって e-POWER と同じ容量となっても、車重が軽くなればコンパクトなロータリーエンジンが有利となるように思う。

MX-30 Rotary-EV に延べ 8時間程度運転した感想をまとめると以下のようである。各運転操作に対する応答は最近のマツダの車らしく違和感が無く自然な感覚である。エレクトリック G-ベクタリング コントロール プラスという前後荷重移動を補助する機能が搭載されていても、運転操作に介入されている感覚も無い。モーター駆動は非常に滑らかで振動を全く感じない。ディーゼルエンジンのトルクの出方とも異なる印象だが低速で力強く、内燃機関車と同じような挙動でレスポンスが鋭敏でも鈍重でもない。回生協調ブレーキを搭載していることを試乗の後知りバイ・ワイヤらしいのだがブレーキペダルを踏んだ感覚も応答も自然である。ステアリングホイールパドルで回生ブレーキの効果を変更可能でも急坂の下り坂やワインディングでも標準設定のままで気持ちよく走れる。乗り心地も長距離走行で疲労を感じることも無く快適である。重めの車重を感じさせず軽快に走り、むしろフロントヘビーが安定感に寄与している。静粛性も申し分ない。操作、応答に関して「自然」の一言で表現したが、運転自体は楽しく視界が広いので積極的に出掛けたくなるだろう。フリースタイルドアを含めた外観については、特にフロント周りのデザインが他のマツダの車と異なっているのが印象的であり、好みが分かれる所と思う。構造上 Dピラーが太く後方視界はあまりよろしくない。後部座席は広くはないので大人 4人乗車では辛いだろう。長期使用したわけではないので断言できないが、普段は家庭で充電し、たまの長距離のために燃料を補給する使い方が向いていると思う。

今回試乗の機会を提供してくれたマツダと試乗の際お世話になった北関東マツダ日立店の各位に対し感謝する。

【注1】^
マツダコネクトを用いて設定可能。「CHARGEモード」での充電上限値もマツダコネクトで設定する。

【注2】^
2023年マツダ技報 MX-30 Rotary-EV のパワートレイン制御 を読むと車速の上昇にあわせて発電出力を増加させる制御としたとあり、アクセルを踏んだ時のエンジン回転数の変化速度(Δrpm/sec)の作り込みを行っているとの記述もある。つまりエンジンの回転数は状況に応じて変化させていると読める。一般的に発電用のエンジンは特定の回転数を用いるのが効率が良いはずという先入観もあり、回転数の変化が分からなかったのかも知れない。

【注3】^
2023年マツダ技報 新型ロータリーエンジン 8C 型の開発—軽量で低燃費,高信頼性を両立した構造系技術— の構造図を見るとモーター、発電機、エンジンを同軸上に配置するのに、前後長の短いロータリーエンジンが最適だった様子が伺える。

以上の内容は以下の情報を参考にした。

以上の画像は全て PENTAX K-1 Ⅱ に HD PENTAX-D FA 28-105mmF3.5-5.6ED DC WR を装着し、35ミリフルサイズ M:22M(5760 × 3840)で撮影したものである。IrfanView を用いて 300 × 200 に縮小したものを表示し、クリックして大きなサイズで表示されるのは 2880 × 1920 に縮小したものである。

移動軌跡(クリックするとPNG形式で拡大)

2024/3/3,4移動軌跡

画像は山旅倶楽部の地図を使用